成長の秘策ゴチになります!

HOST

株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長

白石 徳生氏

株式会社ビズリーチ
代表取締役社長

南壮一郎氏

GUEST

Guest Profile

南壮一郎(みなみ・そういちろう)

1976年生まれ。99年、米・タフツ大学を卒業後、モルガン・スタンレー証券株式会社に入社。東京支社の投資銀行部においてM&Aアドバイザリー業務に従事。2004年、楽天イーグルスの創業メンバーとなる。その後、株式会社ビズリーチを創業し、09年4月、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」を開設。「HRテック(HR×Technology)」の領域で、未来の働き方や経営を支えるさまざまな事業を展開し、日本経済の生産性向上に取り組む。

第43回「課題を明確にし、それを解決する」 事業創りの本質はシンプル

1.楽天イーグルスの立ち上げに参画 尊敬する上司の背中を見て学ぶ

社会に出るまでの経歴について教えていただけますか。

幼稚園から中学1年までの7年間はカナダ、それから高校卒業までの5年間は静岡県浜松市で暮らしました。高校卒業後は、米国の大学に進学したのですが、当時僕がいた高校で海外大学への進学は異例だったため、英語の成績証明書を自身で作成するなど、苦労はありましたね。

それはたいへんな体験でしたね。それで大学を卒業されて、日本に戻ってきた。

当時成長著しかったグローバル金融業界でビジネスパーソンとしての基礎を学びたいと思い、モルガン・スタンレー証券に入社し、東京支社の投資銀行部に配属されました。金融の世界で合計4年従事し、その後、ずっと憧れていたスポーツビジネスの世界に飛び込みました。しかし、想いばかりが先行し、思い描いていたような仕事には就けず、時間ばかりが過ぎていきました。そんなとき、楽天のプロ野球界への新規参入表明を新聞で知り、さまざまな方の人脈を通じて、三木谷(浩史)さんにコンタクトを取り直談判しました。結果的に立ち上げから約3年間、楽天イーグルスには関わらせていただきました。そこでは、三木谷さんはもちろん、当時楽天の最年少役員であった小澤隆生さん(現ヤフー取締役)が球団の取締役・事業本部長を務め、球団社長は島田亨さん(現USEN-NEXT HOLDINGS取締役副社長COO)と、素晴らしい経営者の方々に囲まれ、強烈な個性と仕事のスピードにくらいつきながら成果を追い、毎日が勉強でした。

なるほど。そこから起業するきっかけは何だったんですか?

その頃、楽天はインターネットを使った集客に挑むなど、ITの力を用いて先進的な取り組みを行なっており、その力を身近で感じていました。次のキャリアを考えたときに、インターネット技術は今後の社会や業界の構造転換のきっかけになるはずと思い、これを活用した事業に関われる企業へ転職をしようと決意しました。そこから、1カ月で27名のエージェントの方にお会いし、みなさんからとてもていねいなアドバイスをいただきました。しかし、おすすめしてくださる求人はすべて異なるものでした。世の中はインターネットを介した情報収集や交換がこんなに手軽になっているのに、なぜ転職活動はこんなに非効率なのだろうと、その構造に違和感を覚えました。当時の小売業界では、Amazonや楽天の登場により、インターネット上にすべての選択肢が可視化され、革命が起きていました。同様に、転職市場においても、ビジネスパーソンが手を挙げた瞬間に、世界中の企業から声がかかるプラットフォームがあれば、個人にとっても企業にとっても選択肢と可能性が広がるのではないか、と考えました。そこで、当時の楽天イーグルス球団社長、かつインテリジェンス(現・パーソルキャリア)の創業メンバーでもある島田さんに「もし人材業界に楽天市場ができたらすごいことになりますよ」と伝えたところ、「だったら、自分でやってみたらいいじゃないか」と。

2.人生100年時代 労働寿命は延びる一方、 会社の寿命は短命化

ビズリーチを創業されたのはいつでしたでしょうか。

2009年の4月です。起業にはまったく興味はなかったのですが、自分の経験をもとに即戦力人材向けの転職ビジネスを始めたいと思ったのと、ちょうどリーマンショック直後で起業しようという人はかなり珍しかったので、挑戦してみようと思い起業しました。しかし、どうせやるなら、三木谷さんや島田さんなどこれまでの上司と10年後、15年後に肩を並べて仕事がしたい、とも思っていました。

ところで、御社のビジネスモデルはどうなっていますか。

創業事業である「ビズリーチ」に関してお伝えすると、楽天市場が物を売りたい人と買いたい人をインターネットで直接つないだのと同様に、人材を採用したい企業とビジネスパーソンをインターネットでつなぐ仕組みになっています。採用市場を可視化することで、企業とビジネスパーソン双方の選択肢と可能性を広げることをめざしています。

ITの普及により、トラベル業界は手数料率がどんどん下がってきている。人材ビジネスではどうですか。

この10年間で転職に対する考え方は変わってきています。人生100年時代といわれるなか、遅かれ早かれ定年は80歳になると思います。そのうえ、技術革新によって競争環境は激化し、会社の寿命は短くなっている。そうすると、ひとつの会社で長く働き続けるというのはますます現実的でなくなります。このように、今後転職市場はまだまだ拡大していく余地があります。そう考えると、しばらくは、いまのままで市場は十分成立するのではないでしょうか。

3.人材活用クラウド「HRMOS」 今後10年が勝負

HRテックというと、ビジネスとして2つ方向があると思います。採用プロセスにおけるデジタル化と、採用後活躍できる仕組みを整えるためのデジタル化。御社の場合はどちらになるのでしょう。

採用も評価も労務も、すべて人事部の仕事です。われわれは人事部の業務を効率化し、時間を割くべきコア業務にリソースを使える状態にすることがHRテックと考えていますから、どちらもですね。
 当社では現在、10のサービスを展開しています。そのなかで、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」は雇用の流動化を促進しています。人材活用クラウドとして展開している「HRMOS」はデータに基づいた人材活用をサポートし、企業の生産性向上を支援するサービスです。

10のサービスを展開されているということですが、新規事業の考え方はどのようにされていますか。

その事業単独でビジネスが成立するか、ということを念頭に置いてシンプルに立ち上げています。立ち上げの時点では、既存事業とのシナジーもあまり考慮しません。
 事業創りは、「課題を明確にし、それを解決する」ことだと考えています。そのため、新規事業も、そこから逆算して「どういう戦略、戦術をとればいいか」、「どうリソース(人)を獲得、配置するか」について検討しながら、立ち上げています。

今後の人材ビジネスを考えると、タレントマネジメントが重要になると思います。

おっしゃる通り、これからの10年は、そこが人材ビジネスの“ど真ん中”になると思っています。当社の「HRMOS」は、タレントマネジメントの領域で最も支持されるサービスにしていきたいと考えています。
 近い将来、会社から見たときも、個人から見たときも、「どういうスキルが必要になるか」「どういう人材が育成されるべきか」がデータとして蓄積され、世の中で取引きされるようになれば、日本の経済の生産性の向上に貢献できると考えています。

そこまで考えていますか。

白石さん、宇野さん(現USEN-NEXT HOLDINGS社長の宇野康秀氏)はじめ、ひとつ上の世代の人たちがベンチャーとして、僕らの世代に新しい事業をつくる文化や風土を醸成してくれた。僕らは次の世代のために、サスティナブルな事業をつくり続けることが使命だと考えています。

実に頼もしい。楽しみにしていますよ。本日はありがとうございました。

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