成長の秘策ゴチになります!

HOST

株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長

白石 徳生氏

株式会社再春館製薬所
代表取締役社長

西川 正明氏

GUEST

Guest Profile

西川 正明(にしかわ・まさあき)

1973年熊本県生まれ。米国Le Lycee Francis de Los Angeles 卒業。93年3月、株式会社再春館製薬所に入社。2001年取締役経営統括本部長に就任。独自の経営理念「ありたい姿」を掲げる。04年7月、代表取締役社長に就任。

第34回〝お客様プリーザー〞が築く顧客満足 末永い付き合いで100年企業をめざす

1.先代が 60 歳引退を宣言 30 歳で事業を引き継ぐ

西川さんはどんなタイミングで入社されたのですか。

アメリカの高校を卒業し帰国してすぐのタイミングです、体調を崩していた父が2度目の手術をすることになり、その見舞いを兼ねて、熊本に帰っていました。当時は、先代社長(母)が、経営から家のことまですべてをみていたのですが、父親の看病に加え、会社も売上げ100億円前後で頭打ちになりかけていましたから、そのまま入社しました。19歳でしたね。

それから社長に就任されたのは、たしか売上げが200億円を超えたころとうかがいました。

30歳の時です。それからもう14年が経ちました。先代は58歳の時に、女子プロゴルフトーナメント再春館レディース(現KKT杯バンテリンレディスオープン)の前夜祭で、1000人くらいのゲストを前に、何の前触れもなしに「60歳になったら社長を辞める」と宣言しました。

突然、ですか?

そうなんですよ(笑)。当時、私は28歳。先代は有言実行の人ですから、その宣言どおりに、61歳になる1日前に「社長に命ず」という辞令交付式を社員の前で執り行ないました。

引き継いだ時に先代時代の番頭格の人たちは、どうされましたか。

そのまま残って、いろいろ教えてくれました。

よきアドバイザーとして機能していたわけですね。

はい。先代が余力を残して、私にバトンを渡してくれたということが大きかったと思います。以後先代は「もう譲ったものだから、何があっても私は何も言わない。会社を潰そうが、煮るなり焼くなりお前が好きにしろ」と。仕事のことで何か言われたのは14年間で2回だけ。

経営者の退き方として見事ですね。

先代は5000万円くらいだった売上げを、7年ほどで一気に100億円まで伸ばしました。当時は電話営業で売上げをつくっていたので、オペレーター要員もそれに合わせて増やす必要が出てきて、それで子育て中の人でも安心して働けるようにと、保育園をつくりました。1980年代後半のことです。先代は事業を拡大していくなかで、まず工場を建て、次いで保育園、社員寮、発送センターをつくり、最後に本社を建てました。「見栄を捨て実をとる」、先代のそういうところが私はとても好きですね。

2.「ありたい姿」をつくり社員全員で共有

ところで、御社はある時期を境に、販売手法をアウトバウンドからインバウンドに転換されました。

93年の6月、TM(テレマーケティング)改革と呼んでいます。私が入社して間もないころです。

アウトバウンド営業とインバウンド営業では、180 度違います。とても勇気がいることだったと思うのですが、何かきっかけがあったのですか。

当時、訪問販売の会社でお年寄りに悪質な売り方をして社会問題になっていたケースがありましたし、当社でも、一部のアウトバウンド営業に関して苦情が来ていることを先代は知っていました。「このままでは会社を潰してしまう」という危機感もあったのだと思います。

BtoBとBtoCではちょっと違うかもしれませんが、弊社でも、ここ2、3年、営業力に頼らない、マーケティング主導に方向転換しようとしています。私の知る限りで、御社は、BtoC の世界で方向転換にもっとも成功した会社です。成功に導く秘訣は何ですか。

TM 改革と同時期に、会社をガラス張りにしようということで、一般の方に開放して、ありのままの製造過程を見ていただいたり、お客様の声をうかがい製品づくりやサービスに活かす、「お客様満足室」をつくったりしました。

社長に就任されたときの売上げは200億円。それが現在では320億円と、順調に売上げを伸ばされています。いま振り返って、こうした成績につながった理由をどう分析されていますか。

1年半くらい前に、「ありたい姿」としてまとめ、私たちがめざす将来像を社員全員で共有しました。再春館製薬所を自分たちらしい会社にして、100年続く会社にしようと。そこで、まず社員数を100人くらい増やしました。人に投資してみたのです。そして、社員研修ではお客様に手紙を書く時間を設けたりしました。2000年ごろは弊社製品の購入歴5年以上の会員様は全体の3割弱でしたが、最近では6割強になりました。とにかくお客様に長くお付き合いいただけるビジネスにするというのが、私の方針です。

お客様とのコミュニケーションに舵を切った結果、リピート率の上昇につながった。つまりお客様がダイレクトにコミュニケーションの価値を認めてくれたということですね。

そう信じています。ですから、お客様から社員のお褒めの言葉をもらうと本当にうれしいですね。農家のお客様などから「お芋ができたから」と、直接、お客様プリーザー(再春館製薬所では顧客からの電話を受ける社員をpleaser= 喜ばせる人と呼んでいる)宛てに届くこともあります。

お客様ごとに担当プリーザーが決まっているのですか。

電話受付は、朝8時から夜10時まで、年中無休ですから、いつも同じプリーザーにつながるということはありません。ただし、お客様に対していつでも同じ対応ができるよう、プリーザーがお客様の情報を共有できる仕組みをつくっています。

お客様からすれば、だれが電話を受けても、同じようにていねいに対応してくれることがわかれば、安心できますからね。

3.子どもを入社させたい 社員がそう思える会社に

ファミリービジネスの場合とくに、トップの強いリーダーシップが企業の成長に大きく関わってきます。その反面、幹部社員が育ちにくいともいわれています。

歴史を振り返ると、大半はトップダウンでした。個人的にはそれではだめだと思ってきましたが、ここ3、4年を見ても、私がなんでも決めていたような気がします。しかし、子会社が増えていくと、私がオフィスにいない時間も多くなるので、トップの意思決定を待たなくとも、会社として動けるようシフトチェンジを進めている最中です。

最後に経営に関わらず、今後の人生のテーマを教えてください。

まだ自分が何歳まで社長でいるか、決めていないのですが、社員が自分の子どもを入社させたいと思えるような会社にして長男にバトンタッチしたいと思っています。

ありがとうございます。今日は非常に参考になりました。

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