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レイ・デボア
特集小さなグローバル企業が発信する戦略的コミュニケーションの力
1.小さなグローバル企業が発信する戦略的コミュニケーションの力
世間的にいうと小さな企業だが、存在感の大きなすごい企業がある。トランズパシフィックエンタープライズである。
何がすごいかといえば、取引先には大手企業がキラ星のごとく並び、IR、翻訳事業、マーケティング、コミュニケーション支援から戦略コンサルティングまで幅広く事業展開しているグローバル企業であるところだ。
主な取引先には、東京証券取引所、日本経済団体連合会に日本銀行協会、数多くの資産運用会社や不動産会社に不動産投資信託会社、大手メーカーに加えて日本経済新聞や日経BPなどのメディア企業まである。
この種の事業は代理店等からの受託事業が多いものだが、すべて直接企業と取引を行ない、すべて自社でこなす。そこがまたすごい。なぜこんなことができるのか。
社長でCOOのレイ・デボアは流暢な日本語で次のように語る。
「創業は1995年7月4日で私は2002年に参画しました。当初はスタートアップ時でもあり、代理店経由の仕事が多かったですね。しかし、これでは三つの罠に陥り永遠に成長しないと、会長と話し合いました」
三つの罠とはこうだ。ひとつ、直接関係を持って仕事をしないと最終的なところまで責任が持てない。
二つ目は受託だと自分たちの会社の名前が伝わらない。三つ目は継続性のある仕事ができていかない。
つまりその逆を実行すれば、自分たちの強みが出せるのではないかと考えたのだ。
2.選択と集中で横展開し発展、さらにその先を目指す
自分たちが「やりたい仕事」をするために多少のリスクも負った。
例えば日本不動産証券化協会が毎年発行する「不動産証券化ハンドブック」の英語版の権利獲得がそれだ。日本語版だけ発行されていたものを積極的に版権取得に動き、自らのリスクで発行した。
日本の不動産投資信託(Jリート)分野の事業はいまや同社の根幹を成している。リート業界の多くの企業のIR業務を一手に引き受け、この分野ではトップの存在だ。
東京証券取引所とはJリート各社の開示情報を「Jリートフラッシュ」というネットで速報を流すメディアとして契約し、運営している。こうした運営がさらに同社を力づけていることは想像に難くない。選択と集中の見本である。
一般企業との事業も多い。海外向けのIR事業では「Linking Japan」という情報誌を海外の主要ファンドマネージャー向けに発行し、日本企業の海外投資家向け情報発信にも一役買っているのだ。
グローバルな分野でも重要な業務を担っている。それが不動産関連の世界的なNPO法人であるアーバン・ランド・インスティテュートの日本支部(ULI Japan)の運営を事務局として担っていることだ。
そもそもこの法人は日本で活動をしていたのだが、成果を挙げていなかった。そこに「日本をよく知る」同社が名乗りを上げ、運営に携わり、大きな成果を出したのだ。同社こそ、戦略的コミュニケーションの力を持った企業と言えよう。