Guest Profile
三原 淳(みはら・じゅん)
1967年東京都生まれ。専修大学経営学部経営学科卒業後、ファイザー製薬に入社。その後、スーパー、OA販社、印刷会社、輸入商社を経て、コインランドリービジネスに携わる。オーナー視点に立った経営を目指し独立し、2000年9月有限会社エムアイエスを設立(後に株式会社エムアイエスに組織変更)。16年7月、株式会社mammaciaoへ社名変更
特集40・50代の個人年金代わりとしても人気 IT活用で差別化を図るエコランドリー
1.主婦が「時短」に注目 コインランドリー
けっして新しいビジネスとはいえないコインランドリー事業にいま注目が集まっている。コインランドリーといえば、学生や単身者、高齢者の一人暮らしが利用するというイメージが強かったが、共働き世帯の増加、働き方改革によるライフスタイルの変化などにより、忙しい一家の主婦が「時短」や家事労働の省力化のために積極的に活用するものという見方が強くなってきたからだ。
「パートの休みの日に雨。洗濯の予定が台無し」「雨続き、洗濯ものの山も家干しできない」「週5回も洗濯している時間がない」……。こうした悩みを簡単に解消してくれるのが大型コインランドリーだ。そのおかげで、各地にあるコインランドリーの稼働率は確実に上がり、FC展開する企業の業績も好調に推移している。そうした業界にあっても、その爆発的な出店ペースで競合他社を圧倒する急成長をとげている企業がある。持株会社エムアイエス傘下の事業会社mammaciao(マンマチャオ)である。
100店舗の達成には2000年の創業から12年を要したが、200店舗はそこから3年、300店舗をクリアするための100店舗出店にかかった期間は1年というように、出店スピードは年々、加速度的に増してきている。また、この1年は月間15店舗ペースでの出店が続き、今年度(17年決算)の出店は180店舗に届こうという勢いだ。
同社がこれだけの事業拡大を実現できているのは、世の中のトレンドにうまく乗ったという事実もさることながら、同業他社にはないコインランドリー事業運営のノウハウや、顧客をしっかり引き付けられるシステムの提供があるからにほかならない。
2.洗濯機を遠隔操作 24時間トラブル対応
それではmammaciaoの違いとはどこにあるのだろう。
同社社長の三原淳は開口一番、こう語る。
「実はeco-laundry(エコランドリー)なんですよ。自動投入される洗剤と仕上剤は、ヤシの実を主原料とした100%天然由来で、『環境にも肌にもやさしい』。電解水を利用しているので、すすぎが1回ですみ、33%の節水になります。従来は40分程度かかっていた洗濯時間も、19分で終了できます」
もちろんそれだけではない。通常、コインランドリーは無人で運営されるが、「洗濯機にお金を入れても作動しない、お金だけ取られてしまう」といったトラブルが発生することもある。そんなときは管理者に連絡をとることになるが、連絡がつかなかったり、トラブル解消に時間がかかることもしばしばだ。ところが、利用者にとってそんなイライラも、24時間対応のコールセンターを設置しているmammaciaoには関係がない。そればかりか、洗濯機1台ごとにシステム接続されており、コールセンターからの遠隔操作で、洗濯機を無料で作動させたり、返金を希望する顧客には両替機から投入金額相当分を返金することもできる。
電子マネー(交通系カード、流通系カード)も利用できるし、プリペイド方式の電子マネーもある(3000円の購入で3600円分利用できる)。顧客の利便性にも十分、配慮しているのだ。また、日々の売上げ管理についても、毎日、日付の変わる0時00分に前日までの累計売り上げがメールで送られてくる仕組みになっている。
オーナーへのサポートシステムも充実している。コールセンター利用のほか、洗剤・仕上げ剤などの消耗品費用、修理・点検費用、60カ月経過後のオーバーホール費用などを含めて、2年目まで月々3万4000円、3年目以降の月額費用は4万4000円だ。とくに洗濯機のハードに対するケアが行き届いているのが特徴だ。三原自身、立ち上げから長い間、第一線で、営業マン兼サービスマンを務めており、いまでも社内でもっとも洗濯機のハードのことを知り尽くしているからにほかならない。
販促支援もある。[コインランドリー 所在地域]で検索をかけると、その地域の加入者のコインランドリーが上位に表示されるようSEO対策を講じているほか、新規の出店があると、その店舗へ女子大生リポーターが出向いた店舗紹介動画をYoutube上で「mammaciaoTV」として流している。
こうしたサポート体制が整っているうえに、mammaciaoへの加盟金、ロイヤリティはともに「ゼロ」だという。
3.出店待ちが300名 規模倍増も約束済み
だがしかし、ここまでくると、逆に心配も出てくる。mammaciaoとしての事業性だ。
三原は「洗濯機は米国から直輸入していますから、(卸を通す他のFCより)安く加盟店に卸しても、十分な利益を確保できています。そもそも当社には運営ノウハウがあるわけですから、直営店でも稼いでいます」と言う。
16年度は社員13人で13億円を売上げた。17年度は25億円規模を見込んでいる。
mammaciaoのFCオーナーの平均属性は、40~50代のサラリーマン。自己資金500万円、開業資金の不足分1000万円程度は10年ローンで借り入れている。
「60歳で定年退職するころにはローンも払い終わり、年金をもらうまでの間(受給開始65歳を想定)、毎月の利益を個人年金代わりに受け取るという考え方が、ちょうどその年齢層にわかりやすいのでしょう」
現在、オーナーの募集は東京、大阪、名古屋で開催する説明会を通じて行ない、3会場合計で、毎月200人ほど集まるという。その中から、本気でやりたいという人を絞り込むために、「優良物件情報を順次、紹介していく」という特典をつけた有料会員組織「プレチャオ会員」を募集(会費は預り金として100万円+消費税。開店時に機器代へ充当)。
これまでのところ、出店待ちのプレチャオ会員は300名余りになっている。つまり、これを埋めるだけでも、現在の2倍の事業規模を見込めるということであり、同社のFCオーナーの離脱率が5%未満ということから考えても、ここしばらくはいままで以上の急成長が約束されているmammaciaoなのである。