FUNtoFUN株式会社 櫻木 亮平

Guest Profile

櫻木亮平(さくらぎ・りょうへい)

事業内容:アウトソーシング事業、職業紹介事業、一般労働者派遣事業ほか 設立:2005年7月29日 資本金:8500万円 売上高:17億円(2015年1月期)/24億円(2016年1月期見込み) 所在地:東京都千代田区神田岩本町1-14 KDX秋葉原ビル3F 電話:03-5289-3291 URL: http://www.funtofun.co.jp/

特集「食」業界で”利用価値最大化”を目指す

1.派遣で課題を解決し生産性を高める

 食品業界の慢性的な人手不足は出店計画に影響を及ぼすほど深刻だ。あるピザチェーンはオープン前日になっても、15名必要なスタッフを3名しか集められなかったという。このように出店計画に採用が追いつかず、計画を見直さざるを得ない事態も発生している。こうした中、「食」関連に特化した人材派遣で業績を伸ばしているのが、FUNtoFUNだ。

 同社の主力は、食分野における生産から加工、流通・販売までワンストップで人材派遣サービスを提供している食品事業本部で、売上全体の約7割を占める。例えば、大手コンビニエンスストア(CVS)の弁当や総菜、おにぎり、パンなどを作っているベンダー各社もクライアントの1つ。ここの生産工場の多くで、同社から派遣された大勢のスタッフが活躍している。

 スキルの高い人材を送り込んでくれる同社に現場オペレーションを任せれば、生産性の向上だけでなく、オーナーが本来の経営に専念できるというメリットもある。新規事業開拓など、会社をより強くする仕事に集中して取り組めるわけだ。

 だがなぜ、食品業界にこだわったのか。FUNtoFUN代表取締役社長の櫻木亮平は次のように話す。

「出口(人件費の単価)が高い自動車・電機業界などには古くから人材派遣会社が進出し、派遣を使って生産性を上げるノウハウが蓄積されています。しかし、逆に出口が最も安い食品業界は人材が乏しく、人員確保が難しいにもかかわらず、派遣活用が遅れていました。こうしたニッチ市場だからこそ、後発組の当社にもビジネスチャンスがあったんです」

 とはいえ、いくら要望があっても安請け合いはしない。時給が高くてもスキルの高い人材を派遣し、クライアントが抱える課題を解決しながら生産性を飛躍的に向上させる“コンサル営業”を展開しているのが同社の特徴なのだ。

2.月1回、1日2時間から働ける環境をつくる

 “人材を集める”という点でも同社には定評がある。それを物語るのがこんなエピソードだ。複数出店を計画していたあるスーパーマーケットがスタッフ採用にあたり、人材派遣会社10社くらいに声をかけたが、集まったのはわずか数人。そこで同社に相談したところ、ある方法でなんと一気に300人も集めたという。気になるその方法とは、いったいどんなものなのだろうか。

「じつは、“月1回、1日2時間から働けます”と間口を大きく広げて募集しました。世の中には子育てや介護に追われている主婦など、さまざまな方がいらっしゃいますから、『働きたい時間に働ける環境をつくってあげる』ことが重要なんです」

 ところが、ふたをあけてみると応募者の希望は週5日が3割、週3日が6割、週1日は1割程度。この募集は大成功だったわけだ。

 ただし、こうしたやり方で募集できるのも、同社が数多くのクライアントと派遣先を持っているため、本人の働きたい時間と勤務時間をパズルのように組み合わせることができるからにほかならない。

 通常、1日約200人を派遣しているというが、これだけ人数が多いと病気などで出勤できない人がほぼ毎日出てくる。こうした事態を想定してカバー要員を準備し、“穴を開けない”体制づくりをしている点も信頼感を高めている。

 人材育成にも余念はない。接客マナーや安全管理といった講座からレジ打ちなどの実施訓練、OJTまで、独り立ちできるまでの教育システムを自前で構築。どんな工場や店舗に行ってもスペシャリストとして働ける人材の育成を目指している。

3.食の専門家を派遣する新たな事業にも挑戦

 同社は「クライアントの“派遣の利用価値を最大化する”」というミッションの下、新規事業への取り組みにも意欲的だ。

 出店に積極的なある都市型小型スーパーへの派遣もその1つ。新規店舗のほとんどを同社の派遣スタッフが切り盛りする。今後の出店を見越し、専用の教育システムを整え、現場に出る前に20時間にも及ぶ教育を行なっているという。

 また、料理研究家やフードコーディネーターといった食の専門家を「Foods(フーズ)スタイリスト」と呼び、百貨店の食品売り場などに派遣する事業も2014年6月から本格的にスタートした。

 生鮮魚介専門店を約40店舗展開するある会社では、シーフードスタイリストが店頭で魚料理の実演販売を行なう取り組みを始めている。導入前と比べ、売上げが120%に伸びたという。

 こうした事業展開の下、16年1月期の売上高は前期比約41%増の24億円を達成する見通しだ。創業11年目の今年を「第二創業」と位置づける櫻木は、今後の経営計画を次のように語る。

「社員にとってやりがいのある会社をつくるため、3~5年かけて事業部ごとに分社化し、現場のリーダーから社長を育てたい。売上目標としては5年後に100億円、10年後に500億円を掲げています」

 派遣スタッフのメンタルケアのためにも、営業拠点を増やしていく予定だ。当面は、関東(現在5拠点)に30分圏のドミナント出店で20拠点を目指す。売上高100億円に向け、営業基盤は着実に広がっていきそうだ。

TO PAGE TOP