株式会社赤熊不動産鑑定所 赤熊正保

Guest Profile

赤熊正保(あかぐま・まさやす)

業務内容●不動産鑑定評価業務、不動産に関するコンサルティング業務 設 立●1975年赤熊不動産鑑定士事務所、1988年株式会社赤熊不動産鑑定所 資本金●1000万円 社員数●11名(不動産鑑定士、補償業務管理士、測量士補、宅地建物取引主任者) 所在地●埼玉県上尾市柏座2-8-10 電 話●048-775-1151 URL●http://www.akaguma-kantei.jp/

特集土地・建物の鑑定評価実績は全国規模 豊富な経験と評価実績を誇る埼玉県最大手

1.評価方法次第で不動産評価額は大きく変わる

 不動産オーナーが不動産鑑定士の業務内容を知れば、不動産評価額の見直しニーズが爆発的に顕在化するのではないか。それほど不動産評価額は評価方法によって大きく上がりもすれば、下がりもするのである。

「相続財産評価の際に、画一的な評価をしてしまう税理士は多い。しかし、道路に面しているのが土地の北側か南側かで評価額は6~10%違ってくるし、近隣の悪環境や土地の個別条件によっては大きく評価が下がる。社会的なトラブルを抱えている物件があれば、それも評価額に影響を与える」

 こう指摘する赤熊不動産鑑定所社長の赤熊正保は、評価額の決定には変動性が高いと説明する。

「鑑定の基本は法律や経済情勢など多くの要因項目があり、さらに社会情勢、取引事例、賃貸事例など分析したうえで評価額を評定する」

 一般に不動産鑑定士の業務は見えにくい。不動産鑑定士と接点を持つのは裁判所、都道府県、税理士、弁護士などで、不動産オーナーが直に接する機会が少ないからだ。

 実際、不動産鑑定評価が行なわれるのは、公共用地取得、遺産分割協議、訴訟用鑑定評価、広大地の判定意見、不動産の等価交換、関連会社間・同族間の不動産売買、会社合併時の資産評価・現物出資評価、減損会計・時価会計、非上場株式の評価、賃料分析などで、赤熊によると「不動産鑑定というのは、ストライクゾーンを見分ける仕事だ」という。

2.鑑定実績から公職にも奉じ組織対応で事業を拡大

 赤熊不動産鑑定所は埼玉県で最大手の不動産鑑定事務所で、1975年に創業し、88年に法人化した。赤熊を含む不動産鑑定士3名、補償業務管理士2名、宅地建物取引主任者2名、測量士補1名など11名の陣容で、最も多いときには年間656件を受託したこともある。

 取引先は関東財務局、関東信越国税局、関東農政局、さいたま家庭裁判所、さいたま地方法務局、さいたま地方裁判所、埼玉県県土整備事務所、埼玉県収用委員会などと、税理士、弁護士、民間法人など広範囲におよぶ。現在の報酬の構成比は行政・司法70%、民間30%となっている。

 74年に不動産鑑定士に登録した赤熊は、これまで北海道から沖縄まで全国の土地1万区画以上、建物4000棟以上の鑑定評価を行なってきたという圧倒的な実績をもつ。「埼玉県内の不動産鑑定士で鑑定評価実績はトップクラス」という声も強い。

 こうした実績から多くの公職にも奉じてきた。さいたま地方裁判所鑑定委員、埼玉県収用委員会委員、埼玉県地価公示代表幹事、国税埼玉県主幹鑑定評価員、日本不動産鑑定協会理事、埼玉県不動産鑑定士協会会長など約40もの役職に就任してきた。国の機関や弁護士からは、他の不動産鑑定士が提出した鑑定評価書のセカンドオピニオンを求められることも多いという。

 また、不動産鑑定の世界は個人規模のものが多く、積極的な顧客営業があまり見られないなかにあって、赤熊不動産鑑定所は「行政機関の事務所に挨拶に訪問したり、税理士事務所にダイレクトメールを発送したりするなどマメに営業をしてきた」(赤熊)。その積み重ねと詳細な調査、適切な評価が事業規模の拡大へとつながり、県内最大手に発展したのである。

3.鑑定ノウハウを生かし事業承継やM&Aに応用

 事業規模の拡大は鑑定評価の高度化、多項目の評価実績という副産物をもたらした。受託件数に加えて広範囲の業務を受託する過程で経験則が蓄積され、ストライクゾーンを見分ける評価手法や、依頼主に満足度の高い鑑定評価書の作成など業務水準を向上できたのだ。

 しかも同社の場合、鑑定評価書の提出前には不動産鑑定士同士でダブルチェックやトリプルチェックをかけて精度を高めるが、これも所帯の規模が可能にしている。

 実際、不動産鑑定評価によってどのような差異が発生するのだろうか。

 相続税の申告の場合、路線価が基準とされるが、路線価評価で算定した価格が時価を大幅に上回る場合には、個別性を反映させた不動産鑑定による価格も適用される。その結果、路線価評価で5500万円の土地が鑑定評価では1600万円、9000万円が2000万円に評価引き下げとなったケースもある。

 事業所の賃料では、飲食店で30万円から20万円、工場が1300万円から1100万円、スーパーでは200万円から100万円にそれぞれ減額を実現させた。現在の相場との乖離を実証したのである。

 さらに赤熊は「事業承継では法人を活用した多様なスキームを適用できる」と付け加える。

 例えば相続人適格の子どもや孫に資金を贈与し出資させて、オーナーを代表者とする不動産管理会社を設立しておく。ここで賃貸物件の実質的な遺産分割は終了する。オーナー個人が所有する建物を適正な鑑定評価額で新会社に売却する。オーナーは売却代金でローン残を返済。不動産管理会社は建物を担保に購入資金を借り入れ、その返済にはテナントからの賃料を充て、残りは役員に給与を支払う。役員給与のうち、各役員の納税額プラス一定額以上の残金は役員に再出資させる。

 あるいはこういう方法もある。オーナーの親族を役員とした不動産管理会社を設立して、オーナーはこの会社に管理を委託する。テナントからの賃料で管理料を支払い、親族は管理料をベースに役員報酬を受け取るというものだ。

 今後は、事業承継やM&Aに関わる不動産鑑定評価などにも同社のノウハウを生かし、一般顧客からの業務を50%にまで引き上げていく。

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