株式会社アキュラホーム 宮沢 俊哉

Guest Profile

宮沢 俊哉(みやざわ・としや)

1959年東京都生まれ。三代続く大工一家に生まれ、中学卒業後、埼玉県内の工務店に弟子入りするも、19歳のときに勤め先の倒産をきっかけに独立。78年、埼玉でリフォームを主体とする都興建設を創業(96年「株式会社アキュラホーム」に統合)。94年に住宅建築合理化ノウハウ「アキュラシステム」を開発し公開。これまでに全国工務店約2700社が導入している。また全国工務店・ビルダー250社によるネットワーク「ジャーブネット」を主宰。永代続く優良工務店を育成するための、工務店経営「永代ビルダー塾」塾長として講師も務めている。

特集「長期休暇」の取得は、 会社への感謝の気持ち、 仕事へのやる気を高めてくれた

1.【インタビュー】聞き手:本誌編集人 松室 哲生

全社員を対象にした「長期休暇制度」、社員の出産、育児を支援する「しあわせ一時金制度」など、従業員の働き方を考えた制度の運用などにより、2年連続してホワイト企業*アワードに選出された株式会社アキュラホーム。
本業でも、2017年2月期は増収増益、中期3カ年計画の最終年度にあたる今期(18年2月期)も増収増益を見込んでいる。
住宅産業にとって厳しい環境が続くなか、成長軌道のかじ取りをキープし続ける同社代表取締役社長宮沢俊哉氏に、今後の事業展開について聞いた。


――業績が大変好調だそうですね。

<宮沢>
 おかげさまで、今期(2018年2月期)の売上高は、前期比約70億円増の452億円で着地する見込みです。営業利益も、前期比約8億円増の18億円を予想しています。

――すごいですね。少子高齢化で、住宅着工件数が減るなか、大幅な増収増益になった理由は?

<宮沢>
 わが社の「永代家守り」、すなわち建てた家を長期間アフターケアするというブランドが、住宅購入適齢期である「ロスジェネ世代」を中心に、支持されているためでしょう。例えば、新築住宅の定期点検とは別に行なわれている、入居者様の要望をお聞きする訪問活動や、最近ではリフォーム需要が拡大するなかで、簡単な修繕であれば自分で行なえるよう、住まいのお手入れ方法などを伝える豊かな暮らし講座の開催など、暮らしを長きにわたりサポートする「永代家守り」を行なっています。そうした取り組みがお客さまの満足度を高め、紹介による受注の増加につながっているようです。

――一方で、御社は昨年(16年)3月から、「長期休暇制度」をスタートさせたそうですね。「働き方改革」でも先進企業ということですが、どんな内容なのですか。

<宮沢>
 簡単に言えば、年末年始や夏季休暇とは別に、原則9日間の連続休暇を半強制的に取らせます。

――社長を含めて、全員ですか。

<宮沢>
 そうです。上の人間が休まないと、部下も休みにくいでしょう。私は根っからの仕事人間なんですが、率先垂範して連休を取っていますよ。役員たちにも長期休暇を取らせています。最初は様子をうかがっていた社員たちも、それを知って、だんだん休みを取るようになりました。昨年は、社員の約7割が長期休暇を取得しました。

――なぜ、長期休暇制度を導入されようと考えたのですか。

<宮沢>
 妻と一緒に海外視察旅行に行ったとき、旅先で日本の若者たちと出くわしたんですね。彼らは、会社を1週間以上休んで来ていると言うんです。ところが、わが社にはそんな社員はいません。私は、企業は社会の変化に合わせて進化しなければいけないと考えているんですが、どうもうちは流れについて行っていないぞと。私たちの世代は、家族を顧みないで仕事に打ち込むことが半ば当たり前でしたが、いまは違います。仕事も家庭も両立しないといけません。「家づくりは人づくり」と言っている以上、わが社もワークライフバランスの取れる労働環境にしようと考えました。そこで、8年ほど前か
ら、「水曜日18時一斉退社」「クリスマス・イブ早帰りプレゼント」を導入したんです。

――すでに、そんな取り組みをされていたんですね。

<宮沢>
 実は、長期休暇制度も2〜3年前から、人事部門に準備させていたんですが、なかなか実現できなくて。というのも、休みを増やすとマンパワーが落ちると、現場の幹部を中心に抵抗が強く、取締役会でも議案が通らなかったんです。最後は私が押し切ったんですが。

――確かに、労働生産性は下がりそうですが、実際には増収増益ですよね。どうしてでしょうか。

<宮沢>
 考えられるのは、一つはモチベーションのアップですね。若手社員からは、長期休暇を取ったとき、会社に感謝の気持ちが生まれ、仕事に対するやる気が高まったという話も聞きました。もう一つは業務効率のアップでしょうか。わが社でも、営業マンが担当の顧客情報を一人で抱え込んでしまうといった「個人プレー」が多かったんですが、長期休暇の導入を機に「チームプレー」に切り替えました。社員が長期休暇のとき、ほかの社員がフォローしなければならないからです。その結果、職場の情報共有が進んで、業務が適正に配分されるようになり、メンバーの長期休暇に備えて、職場での仕事の段取りもよくなったんですね。

――なるほど、長期休暇には、いろいろな効果があったんですね。そういえば、御社が主宰するホームビルダー集団「ジャーブネット」が活発化しているそうですが。

<宮沢>
 ジャーブネットは、「アキュラネット」が前身で、木造住宅の普及のため、全国の工務店をネットワーク化した組織です。低コストで質の高い家を建てる技術やノウハウを、工務店に提供していたんですが、組織が大きくなるにつれ、利潤が目当てのメンバーも増えてしまったんですね。そこで、「永代家守り」という考え方を共有できるメンバーに絞って、ホームビルダーの経営塾「永代ビルダー塾」として、09年より始動しています。会員は、約600社から約250社に絞られています。

――新規事業として、「街づくり」にも力を入れておられますが、住宅地の開発が縮小傾向にあるなか、なぜ参入されたのでしょうか。

<宮沢>
 既存の街づくりは、乱開発が目立つので、レベルアップする必要があると考えました。わが社が開発する住宅地の大きな特徴は、これまでの建売分譲の住宅地と違って、宅地の一部を住民同士で共同使用することで、まとまった空間が確保でき、ゆったりとしたコミュニティスペースが取れるのが利点です。電線などは地中に埋設し、住宅のデザインも一軒ごとに変えるなど、景観にも配慮しています。住宅地の開発には、最低5年の時間と巨額の資金が必要ですが、キャッシュフローの範囲内で開発を進めれば、リスクは回避できると考えています。

――現在、どんな街づくりを進めているのですか。

<宮沢>
 東京都稲城市に「若葉台プロジェクト」を開発中です。総投資額は約25億円。約50区画規模で、来年(18年)1月に第1期分譲をスタートします。若葉台では、管理組合が太陽光発電設備を保有し、売電で管理費を抑えているのも特徴ですね。さいたま市などでも、住宅地の分譲を手がけています。

――とても興味深い事業ですね。

<宮沢>
 街づくりは、わが社の経営の柱に育つと考えています。住宅事業と併せて、将来は年商3000〜4000億円を目指しています。

――本日は、有意義なお話をたくさんうかがえました。誠にありがとうございました。

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