アクティブ・コネクター株式会社 松本麻美

Guest Profile

松本 麻美(まつもと・まみ)

女子学院高校2年次中退の後、経団連の奨学金を受けて英国United World Collegeに留学。McGill Universityにて開発学、政治学を学び、その後東京大学大学院教育学研究科/比較教育社会学専攻で修士課程修了。外資系金融機関で社会人としてのキャリアをスタートした後、NGOと日本政府のパキスタン開発援助案件に携わる。 2013年にアクティブ・コネクター株式会社を起業。現在、同社代表取締役として日本企業・日本の大学の グローバル化の問題解決に取組む。 《企業データ》 2013年5月設立。修士や博士といった専門性の高い学位を持つ外国人留学生を対象にした有料職業紹介、グローバル人材採用に関する企業向けコンサルティングなどを展開。登録学生数(外国人留学生)700名、登録企業数50社(2014年8月現在)。 http://www.active-connector.com/

特集企業のイノベーションを牽引する人材を本気のグローバル企業へ橋渡しする

1.人材紹介サービスのなかでも異彩を放つ

 若き起業家・松本麻美さんが立ち上げたアクティブ・コネクター株式会社は、数ある人材紹介サービスのなかでも異彩を放つ存在だ。創業わずか1年のベンチャー企業が注目を集める理由は、その人材にある。

2.Made In JapanからMade With Japanへ

 同社はグローバル化を進める企業に対して、東京大学、早稲田大学、東京工業大学などのトップ校に在籍し、5割が修士、2割が博士と高い専門性を持つ「外国人留学生」を紹介する。留学生の国籍は、ヨーロッパ22%、東南アジア15%、中国14%、南アジア11%、アフリカ11%、アメリカ9%とさまざまで、現在の登録学生数は700名。その大半が、同社の理念「ダイバーシティを通じたイノベーション」に賛同した留学生の口コミから集まっている。

 一方、こうした優秀なグローバル人材を求める企業の登録数は現在50社。大手不動産会社や大手IT系企業、コンサルティング会社、シリコンバレーにオフィスを構えるスタートアップ企業など多岐にわたる。
「日本のよさも母国のよさも知っているハイブリットな人材である留学生と、グローバル化を目指す企業との橋渡しをしています。今後日本が世界規模のビジネスを展開していくなかで求められるのは、Made in JapanではなくMade with Japanという発想。つまり日本人の視点で、日本人が考えたいいものをそのまま海外に持って行くのではなく、外国の人と一緒に作り上げて、現地になじみやすい形に変えながら展開していくことが必要です」

 松本さん自身、グローバルな舞台で活躍してきた一人だ。16歳で渡英し、世界各国から選抜された高校生が学ぶ国際学校に留学。カナダでの大学留学を経て、東京大学大学院に進学し、在学中にユニセフのガーナ事務所で新規事業を立ち上げる。大学院修了後は、米国投資銀行ゴールドマン・サックスに入社。その後は、日本のNGOの現地代表として、またJICAの一員としてパキスタンでの開発援助に携わってきた。

3.グローバル化の本音と外国人留学生とのギャップ

 「援助」というフィールドで活動していた松本さんが、「ビジネスでの問題解決」に方向転換した契機はパキスタンでの体験にあった。「日本のものは確かに素晴らしいが、手にできない」と嘆きつつ、クオリティの限られた製品を使って生活を送る現地の人々。その姿を目の当たりにし、「援助という形ではなく、日本の製品やサービスを彼らがアクセスしやすいように提供し、広めていくことが彼らの生活を向上させることにつながると確信した」と言う。

 とはいうものの日本の製品を途上国や新興国の人々に届けていくための道筋が見えない。そんなとき、松本さんはふと目にした雑誌で「日本にやってきた外国人留学生の4人に1人しか日本で就職できない」実情を知る。「日本に思い入れがある留学生はこんなにいる」。彼ら彼女らを通じて、世界の視点を取り入れながら日本のものを世界に広めていくことが、日本のグローバル化の問題解決に向けたブレークスルーにつながる。そう信じて、2013年に起業した。

 ビジネスの世界においてグローバル化の必要性が叫ばれて久しい。優秀なグローバル人材の不足を嘆く声もあちこちで聞かれている。同社が紹介する人材は引く手あまたかと思いきや「当初は非常に苦労をした」と松本さん。積極的にグローバル化をうたう企業をはじめ、さまざまな企業にアプローチを繰り返したが、異口同音に「欲しいのは海外経験のある日本人や日本人的な外国人」と言われたのだ。

「『そもそも外国人留学生やダイバーシティ(多様性)に何の意味があるのか』という企業が大半で、外国人留学生の個性を生かしてダイバーシティを推進しようとする企業は限られていました。ふと気づくと、必死に外国人留学生の価値を啓蒙して回っているだけでした。それならば、企業がその価値や可能性に気づくような仕組みを作ろうと、人材紹介に並行して始めたのがオープン・イノベーション・セッションです」

4.留学生の心にも変化中小企業の魅力に目覚める

 オープン・イノベーション・セッションというのは、クライアントの抱えるグローバルな課題について、自社の社員10~20名と同人数の外国人留学生たちが共に考え、それぞれの視点で自由に意見を交わすという場。過去に日本の大手上場企業やITベンチャー企業と、グローバルな課題ということをテーマに実施してきた。

 「いろんな国の留学生から『いまの日本には競争力がない。アジアであればシンガポールや香港に魅力を感じる』といった本音を聞き、自分の持つイメージとのギャップに衝撃を受けた社員の方も多かったようです。セッションではいままでになかった視点で自分たちの事業や日本を見られるようになり、自分たちの持つ新たな課題に気づきます。また、英語でのセッションに当初は抵抗を感じていた社員の方も、いざやってみるとみな生き生きと取り組んでいたのが印象的でした。第2回の開催までに英語を猛勉強したという方もいました」

 留学生はこうしたセッションを通じて「自分たちがどう日本と海外をつなげていけるのか」という働けるフィールドを感じたり、複数の文化を自由に行き来できるという強みを再認識するきっかけとなっている。

「世界の人たちの視点を取り入れながらクライアントと一緒に革新的な事業を興していく」ことをミッションとして掲げるアクティブ・コネクター。同社が考えるグローバル人材とは何か。「必要なのは日本と現地の状況を見極めて、両者の視点で考えられる『共感力』であり、未来を考えながら新しいものを作っていく『創造力』であり、いろんなグループや文化の人たちを牽引し物事を推し進めていく『巻き込み力』をもった人材。日本の文化も海外の文化も理解していて、両方をつなぎ合わせて新しい価値=イノベーションを創り上げていける人です」

 松本さん自身がその力を持ち、新しい価値の創造を体現する同社が、本気でグローバル化を目指す企業に変革をもたらす日も遠くはない。

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