Guest Profile
國師 康平(くにし・こうへい)
1982年岡山県生まれ。近畿大学を卒業し大手不動産会社へ入社、2010年に創業し今に至る。
特集AIを活用し中古ワンルームの仕入れを効率化「IT×不動産」事業で顧客に寄り添う
1.査定時間はわずか数秒 驚異の「HAYAGAI」
現代は何か買いたいものがあるときには、まずはインターネットにアクセスする。それは不動産についても例外ではない。どこにどんな物件がいくらくらいで売り出されているのか、一般の生活者である買い手にとってはインターネットが情報収集の入り口である。今はそんな時代だ。しかし、売り手である不動産事業者はそうしたIT時代に追いついていないのが現状だ。
そんな中で、Fan’sは一際目を引く存在である。
Fan’sのこれまでの成長を支えてきた主力事業は、土地を仕入れて建物を建て、分譲して管理をする、ワンルームマンションのデベロッパーである。しかし、2010年の創業から7年経った今、同社は「IT×不動産」事業者として変わろうとしている。
デベロッパーとしての事業をしながら中古マーケットにシフトしているところだと、Fan’s代表取締役の國師康平は言う。そしてその方法は、旧態依然としたものではなくIT時代ならではのやり方だ。
マンションを売りたいと思った人には、Fan’s中古ワンルームマンション買取り査定サービス「HAYAGAI」にアクセスして査定をしてもらう。この査定にかかる時間はわずか数秒しかかからない。
「査定は人工知能(AI)を使います。AIにはインターネット上やシンクタンクの情報が集積してあり、相場の上昇・下落率も査定基準になります。また、弊社での買取り実績や銀行による利回り評価も加味し、AIがそれらの情報を元に自動査定します。そして、弊社はその査定価格で即買取りを行ないます。査定から買取りまでをワンストップで行なえるのは今のところFan’sのみです」(國師氏)
同社の中古マーケットへのシフトは、「IT×不動産」サービスを運営していくなかで着々と進められている。
中古マーケットは、物件を仕入れる際に仲介業者を活用するのが普通だ。しかしFan’sのシステムでは直接買取りであるため、仲介手数料が発生しない。そのため売り主は物件を高く売却でき、Fan’sとしては、次のオーナーへ安く提供することが可能になるのだ。
2.顧客獲得コストは業界“一番安”
「従来の不動産会社の販売方法は、広告や営業マンへの報酬などにそれなりの営業コストをかける。弊社ではITを活用して効率的な集客を実現、コストを抑えることができています」
現在、同社では、とくに女性を対象に「高年収女子のためのスマート投資術」というセミナーを定期的に開催している。これがFan’s独自の集客方法のひとつである。
そして応募してくる人をネット上で集計し、どんな女性が高収入なのか、どんな人が同社の商品に興味を持ってくれるのかなどでセグメントする。その積み重ねが、一人一人の顧客に合った広告を当てていくことにつながる。
「お客様を獲得するための費用単価は、業界でも一番安いのではないでしょうか」とも言う。
3.AIで査定、ITを活用し販売する新たな仕組み
ファミリータイプのマンションは、間取りも違えば、立地条件や用途もさまざま、ワンルームマンションのように単純に坪単価は出せない。
投資対象がほぼであるワンルームマンションは、建物のブランド名や立地だけで坪単価の査定が可能だ。だからAIという仕組みの特性を存分に生かすことができる。
「物件をAIで査定し、買い取り、ITを活用し販売する。成約につながる可能性が非常に高くなったときにようやく、営業担当が直接出向むく新たな仕組みを確立した」
Fan’sは今年(17年)1月から電話営業をやめた。営業マンは現在30数名ほどだ。営業マンを抱えるということは、それだけコストがかかり、その分を販売価格にも乗せざるをえない。
例えば、100件の物件を売るのに120人でやる会社、70人でやる会社、30人でやる会社では全く違う。國師は、労働集約型ではない新たな営業スタイルの確立を目指しているのだ。
「そうすることで、本来差別化しにくい価格の差別化ができる。そこまでは早急に実現したいと思っている」
國師が、ITとAIを使って起こそうとしているイノベーションがこれだ。
「ワンルームマンションというニッチなところに特化していることが、当社のビジネスの強み」
國師は、自社の事業の強みをそう分析する。
4.空き家再生で高利回り物件を創出
そして、もう一つ國師がこれからやろうとしていることがある。
「空き家再生事業です。放置されてしまっている空き家を買い取って、リノベーションし、入居者をつけて、高利回り商品にして投資家に売却するのです」
社会問題になっている「空き家問題」。これは、今すぐにでも必要とされる事業かもしれない。そして、これもニッチなところに目がいった事業とも言える。
本質的な課題と向き合い、ニッチなところに目を向け、戦いを挑むことがFan’sの強みであり、だからこそファンを多く生み出しているのだろう。