Guest Profile
内藤 将志(ないとう・まさし)
1977年東京都生まれ。99年慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社キーエンスに入社。工場自動化用のセンサー・制御機器の営業に携わる。2005年に株式会社日本エル・シー・エーに入社し、フランチャイズ加盟店募集営業、新規事業立ち上げコンサルティング、営業組織力コンサルティングなどを担当。09年にシルバーライニングを設立し、代表取締役に就任。
特集製造業の専門知識に強み 激戦のテレアポ代行で急成長
1.大手から中小まで取引先企業は累計400社以上
インバウンドやアウトバウンドの電話対応などを請け負うコールセンター(テレマーケティング)市場が拡大している。矢野経済研究所の調べによると、同市場は2012年度以降1~2%増の成長を続け、17年度は8637億円(前年度比1・5%増)になる見通しだ。こうしたなか、アウトバウンドのテレアポ(電話営業)代行で急成長しているのが、シルバーライニングだ。
同社のテレアポの概要はこうだ。クライアント企業から新規開拓営業の依頼を受けると、本社(20席)と長崎(35席)にあるコールセンターから、クライアント企業名でターゲット設定した会社や個人事業主に電話をかけ、営業のアポイントメントを取る。アポの日時や部署名、担当者名、メールアドレスなどを顧客企業に報告する。それに基づき顧客企業の営業担当者がターゲット企業に出向き商談をする、という流れだ。
顧客企業は製造業のほか、IT関連、サービスなど業種は多岐にわたる。規模も大手から中小まで幅広く、取引企業数は累計400社を超える。
市場が拡大しているとはいえ、テレアポ代行を手がける企業は多く、競争は激しい。シルバーライニングの強みについて、社長の内藤将志は次のように語る。
「当社は製造業に強いことが一番の特長です。私自身がもともとキーエンスで営業をしていたこともあり、特に工場の生産ラインで使われる制御機器や自動化用の部品などに詳しい。この分野は業界事情や専門知識がある程度ないと、テレアポ代行は難しいのが実状です」
同社の取引先には三菱電機エンジニアリング、キヤノン、リコー、デンソー、ブラザー工業など大手メーカーが名を連ねる。
製造業以外にも、カルチュア・コンビニエンス・クラブのTポイント事業など、売り上げ規模の大きな取引先は多数ある。
2.費用対効果が高いテレアポ外注
「テレアポの外注は費用対効果が非常に高く、需要は今後も増えます」と内藤は自信を示す。テレアポを自社内で対応する場合に、いくつかのデメリットが考えられるからだ。
第一は、営業マンが電話をかけることによる機会損失だ。仮に一日2時間、営業マンが電話をかけた場合、営業やクロージングの機会を月に数十時間失うことになる。優秀な営業マンであればあるほど、その損失は大きい。
二番目は、テレアポ専任のスタッフの離職。特に中小企業の場合、テレアポスタッフは少人数で、しかも売り込む商材が限られているため、アポが取れないと精神的にまいりやすい。結果、辞めてしまうことが多く、新規の採用も考えるとコストもバカにはならない。
三番目は、テレアポが新入社員のモチベーションダウンにつながる可能性。新入社員の営業研修としてテレアポを行なわせる企業は少なくないが、そもそも営業能力とテレアポのスキルは別物であり、新入社員の営業研修にはならない。新人ではアポ取りが思うようにいかず、かえって自信を喪失、退職につながるケースもある。
こうした実状を背景に、シルバーライニングの業績は好調だ。コールセンターを立ち上げた12年以降、売上高は倍々で伸び、15年度に1億円の大台に乗った。
3.コンサル力を蓄え顧客満足度の向上へ
これまで順調に事業を拡大してきたシルバーライニングだが、ここにきて課題も見えてきた。
実は昨年(16年)、取引量の多かった顧客との契約打ち切りが数件続いた。
「契約打ち切りの理由で一番大きいのは、お客様との意思疎通です。お客様が改善提案を期待されていることを再認識しました。つまり単なる営業ではなく、コンサルティング力を備えた営業が必要になるということです」
手を打つのは早かった。昨秋から「コンサルタント」の育成に乗り出した。
「当社の仕事はお客様の営業新規開拓のお手伝いです。お客様によってはプッシュ型の営業が初めてで、どう進めていけばいいのかわからないというご相談もあります。ターゲット企業をどう設定するか、リストアップはどうするか、商材が複数ある場合はどれを切り口にするかなど。そして実際に一定期間テレアポを行なった後に検証し、改善策を考えていく。それをお客さまと一緒に進めていかなければなりません」
こうしたコンサル力は、テレアポのスキルとは必ずしも一致しないため、企業での法人営業経験者やマネジャー経験者などを中途採用し育てている。現在、3人のコンサルタントがおり、さらに増やす計画だ。
さらに事業内容の拡充にも取り組む。現在、売上高の9割超をテレアポ代行が占めるが、その先の販売までを手がけたいと意欲を示す。
付随サービスも考えている。アポ率が上がれば、クライアント企業の業績も上向き、営業マンの増員を図る。クライアントの営業マンが増えれば人材育成も必要になるが、営業の実践ポイントを心得た同社が営業研修などを提供することも構想中だという。
「当社はいまちょうど踊り場にきている段階です」と表情を引き締める内藤。シルバーライニングは次のステージに向けて動き出した。