佐藤和基税理士事務所 佐藤 和基

Guest Profile

佐藤 和基(さとう・かずき)

1984年、埼玉県生まれ。2007年1月に相続最大手の税理士法人に入社、相続税の業務に携わる。10年に相続税以外の一般的な税務を学ぶため銀座の税理士法人に転職。14年1月、独立開業した。15年1月、相続税還付を世の中に広めていくため、一般社団法人相続財産再鑑定協会を設立した。09年、税理士試験合格。

特集相続税の還付に光を当て全国から依頼が舞い込む

1.大手税理士法人で実績 相続税の見直しに精通

士業の発展は業務領域を拡大して〝総合化〞に向かうのが通例だが、逆に絞り込んでブランディングの確立を図り、地歩を固めた税理士がいる。東京・池袋にオフィスを構える佐藤和基である。

佐藤は相続税に強い大手税理士法人の出身。在籍時に、相続税の申告に誤りが多く還付が発生するのに、顧問税理士が門外漢であるために見過ごされているケースをひんぱんに垣間見ていたが、大手税理士法人ゆえに、一定額以上の報酬を見込める案件しか受託しない。やむなく断わった依頼主を救済したいという職業意識に加え、相続税還付の需給ギャップに着目した。

「高齢化の進行で死亡者数が年々増加していくなかで、多くの税理士は確定申告の代行業務をメインとしていて、相続税の申告に精通している税理士は少ない。相続税に精通していなければ還付の手続きもできない」

独立したのは2014年。相続税見直しの依頼は毎年増え続けて年間30〜40件。依頼主のエリアは全国にわたり、紹介ルートは保険会社や不動産社、士業など土地所有者を多く抱えている先、あるいは既存の依頼主がメインである。月刊タウン誌『池袋15'』(いけぶくろじゅうごふん)に毎号掲載し
ている広告からも、主に練馬区から月1件ペースで依頼が入っている。「広告料は十分ペイできている」という。

2.費用は完全成功報酬 還付金の 35 %

相続税の還付の確率は70%程度、還付金の平均は1360万円。なかには4000万円の相続税を精査したところ400万円まで削減でき、3600万円が還付されたケースもある(還付率90%)。費用は完全成功報酬で、還付金の35%を成功報酬として受け取っている。

現状では還付を申請すればおおかた返金されているが、それだけ不動産の評価減要素が見落とされているのだ。以下は、佐藤が手がけた案件である。

依頼主に対して税理士が計算した相続税額は6億円。佐藤が現地調査と役所調査を実施した結果、じつに10項目におよぶ評価減要素を特定できた。①形状が整形でないのに評価減していない不整形地補正の失念、②側方路線影響加算に対する間口按分の失念、③造成費控除の失念、④都市計画道路予定地の見落とし、⑤評価単位の誤り、⑥旗状地の差引計算の失念、⑦自社株式の評価ミス、⑧倍率地域の倍率区分ミス、⑨庭園設備の評価ミス、⑩未収家賃と前受家賃の計上失念。この10項目を適用して見直したところ、相続税は5000万円減の5億5000万円に算定された。

依頼を受け付けてから、調査に2〜3カ月、税務署でのチェックに3カ月を経て、還付までの期間は約6カ月を要する。還付金を申請したのち、およそ半数について税務署から問い合わせが入ってくるからだが、佐藤は「エビデンスを揃えて根拠を説明しているので、還付請求は90 %以上通っている」と話す。

還付金申請業務をスムーズに進められるかどうかは、依頼の仕方にも左右されるという。通常、相続税申告書と添付資料一式の2点を提出すればよいのだが、なかには、素人判断で「余分な資料はいらないだろう」と一部を抜き取って提出をする依頼主もいる。すると、往々にして資料に不備が生じてしまう。佐藤は「2つの資料をそのまま提出してほしい」と依頼者に促している。

3.相続税申告のセカンドオピニオン

こうした佐藤の仕事は、いわば相続税申告におけるセカンドオピニオンである。だが、いまだにセカンドオピニオンを快く思わない医師が少なくないように、プロフェッショナルは、自分の仕事を同業者に検証されることに首肯できない気質の持ち主だ。税理士もその例外ではない。たとえ相続税の還付金申請に明るくなかったとしても、他の税理士に依頼されたことを知れば、心中穏やかではいられない。

そこで佐藤は依頼者に3つの注意事項を説明した文書を手渡すことにしている。

注意事項の第一は、還付口座を顧問税理士に見せていない口座に指定しておくこと。第二は、被相続人の死亡後3年10カ月以内に相続財産を売却した場合には必ず、修正申告もする。相続税の取得費加算の特例を受けている可能性があるが、還付を受けたのに修正申告がなされないと顧問税理士に更正処分が通知され、還付依頼をしたことがわかってしまうからだ。第三は、還付請求の約3カ月後に税務署から更正通知書が届き、還付が認められると国税還付金振込通知書が届くが、いずれも顧問税理士には見せない。

いずれも些細なことだが、従来の税理士との関係を保持する生命線である。

相続税の手続きは今後ますます増えていく。それを示すデータが年間死亡者数の推移である。厚生労働省の集計によると、05年に約108万人だった国内の年間死亡者数は16年に約130万人。団塊世代が全員90歳を超える40年には、約166万人に増えると推計している。

おのずと佐藤への依頼も激増するはずだ。今後も、佐藤は相続税の還付に関する専門性を極めていくという。

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