株式会社ティーケーピー 河野 貴輝

Guest Profile

河野 貴輝(かわの・たかてる)

1972年、大分県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、伊藤忠商事株式会社為替証券部入社。日本オンライン証券(現・カブドットコム証券)、イーバンク銀行(現・楽天銀行)の立ち上げプロジェクトに参画し、ITと金融の融合事業を手がける。イーバンク銀行で取締役営業本部長等を歴任した後、2005年8月、株式会社ティーケーピーを創業。11年、TKPガーデンシティ品川(旧ホテルパシフィック東京1F宴会場)の運営を開始。ニューヨーク、上海にも進出を果す。現在、全国1,288室、93,438席(2014年3月現在)を運営する業界のリーディングカンパニーである。

特集「データベースの徹底活用から見えてきた次なるビジネス進化の新潮流は、顧客との密着度がカギになる」

1.データマイニングで潜在的ニーズを探り、独自の仮説に基づいた提案

 TKPには利用実績およそ8万社のデータベースがあります。これをデータマイニングすることで利用者の潜在的なニーズを探り、TKP独自の仮説に基づいた提案を日々行ないながら、利用機会を増やす努力をしています。
 この利用実績を解析してみると、TKPにおいてもパレートの法則(8:2の法則)が成り立っていることがわかります。上位2割の利用企業の売上げが全体の8割を構成するということです。具体的には、利用企業上位100社で売上げ全体の5割から6割を占めています。別の見方をすると、それ以外はロングテールの顧客であると考えることができます。

2.アップセルの可能性を秘める大多数のロングテール顧客

 企業の行動特性は大きく「受注タイプ」と「市場タイプ」の2つのカテゴリーに分類されます。TKPはレンタルニーズという大市場へ向けてさまざまな提案をしていますが、やはり個人よりも圧倒的に法人利用が多く、BtoBの領域、つまりは受注タイプに属していると言えるでしょう。
 このような事業領域では、新規得意先の獲得や新しい付加価値の提供などを戦略的に行なわなくては、事業を継続的に発展させることはできません。そのために新規得意先の開拓を必死になって行なうわけですが、電話帳などの外部リストを使い、ひたすら営業をかけるだけでは、コストばかりが増え、いい結果は得られません。ではどうするかというと、自社で蓄積してきたデータベースから顧客の利用行動を分析し、仮説を立てて、それに基づくアップセル営業をしかけていくのです。
 前述のようにTKPの事業においてはパレートの法則が成立し、かつロングテールの売上げ部分も重要な構成要素になっています。仮に1ヵ月の利用者が7000社であったとすると、上位1400社で売上げの8割を構成することになり、残りの5600社はロングテールです。ならばこの5600社に注目し、特別なアクションを取っていく必要があるのです。この中には初めてご利用いただいた企業もあれば、TKPが持つ利便性あるメニューを知らずに利用されている企業もあります。会議一つとっても、テレビ会議システムのようにより効率的に会議をするインフラサービスがTKPのラインナップにあるのにもかかわらず、もしかしたらそれをまったく知らずに、ハードである会議室の利用のみになっているかもしれません。
 TKPの付加価値サービスをさらに知ってもらい、よりよい会合やイベントにして満足度を高めてもらうためには、個別営業による案内や提案が不可欠なのです。TKPにしてみれば、ロングテールの5600社は利用いただいた実績のある企業ですから、特定取引先です。この特定取引先との密着度を高めることが受注タイプの企業の成長エンジンとなるのです。

3.アナログで裏打ちされた営業がさらなるブランド力へと導く

 高度成長時代、ハードがビジネスの要でした。TVや洗濯機、あるいはビルやマンションといったハコモノなど、ハード単体でビジネスは成立していたのです。それが家庭用ゲームやパソコンのようなハード+ソフトという合わせ技ビジネスへと変化し、やがて顧客の便益を考えたサポートや付帯サービスをも必要とするニーズが生まれてきました。その後、情報技術の革新と普及、そしてITのネットワークによるソリューションの提供へとビジネスの姿は進化しています。
 TKPにこれらを当てはめると、貸し会議室をはじめとするレンタルスペースは、相対的に割安な価格と公共交通機関からほど近い利便性、それに大会議室から小会議室まで、収容人数の最適化を図るバリエーションで、競争優位性を高めました(ハード)。
 そして音響映像機器の充実をはじめとする付加価値ある設備と専門スタッフの配置、ケータリングサービスなど多様なニーズへの対応を行なってきました(ソフト)。
 さらに快適性と便益を追求したもう一段階上の食の提供やホテル並みのおもてなし、旅行業免許の取得により実現したワンストップサービスの提供へと質を高めてきました(サービス)。
 そして、いまやそれらを全国主要都市拠点というリアルなネットワークとITネットワークにより結ぶ、いわゆる拠点+情報の融合で顧客満足度の高いソリューションを導き出しています(ネットワーク・ソリューション)。
 そこで次なるビジネスの進化の新潮流は何かと考えてみると、それは信頼というブランド力に行き着きます。これをTKPで考えれば、顧客との密着度ということになるでしょう。
 では顧客との密着度を高めるにはどうすればいいのでしょうか。残念ながらIT利用だけで解決させるのはまだ難しいというのが持論です。つまりフェイスtoフェイスの営業活動に戻るのです。ここにTKPの営業部隊の意味があるのです。信頼=ブランドであるなら、TKPは営業マンがそのシンボリックな役目を果たさなければなりません。前述したロングテールの5600社に対して、顧客目線に立った自社サービスのプレゼンテーションを行なうべく、日夜、営業部隊が中心となって腕を振るうのです。
 TKPでは「お客様だけの担当者」を制度化し、専門知識で最適化を図るプロダクト営業と担当営業の両面で営業強化しています。年1回の利用者を年2回に、30名の会議としての利用から500人の宴会にも受注を広げていくためには、ヒトによる営業というアナログのビジネスが最適なのです。
 もちろん、そこにはデータベースに蓄積された生きた情報があるからこそ、営業効率を高めながら、顧客との密着度を高めることができるのです。

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