株式会社エフアンドエム 森中 一郎

Guest Profile

森中 一郎(もりなか・いちろう)

1961年、大阪府生まれ。 立命館大学卒業後、84年株式会社日本エル・シー・エー入社 、87年に株式会社ベンチャーリンク転籍、西日本の営業を統括。90年7月、従来の夢であった20代での独立起業を実現するため退社。株式会社エフアンドエムを設立し、代表取締役に就任。2000年には大阪証券取引所ナスダック・ジャパン(現・JASDAQ)上場を果たした。

特集「経営に決算書を活かしていますか?」

1.自社のキャッシュフローを把握できていますか?

 会社が立ち行かなくなるのは、多くの場合、その会社が大損したからでもなく、債務超過になったからでもありません。支払うべきものを支払えなくなったから、つまり、キャッシュフローが行き詰まったからです。
キャッシュフローを行き詰らせるものにはいろいろあります。たとえば、法人税、所得税、賃金、社会保険、調達、返済など、挙げればきりがありません。
「税理士に任せているから大丈夫」と思われるかもしれませんが、税理士はあくまでも〝税務〟の専門家です。税理士は納税についての指導を行なうため、〝法人税〟には敏感ですが、会社全体の最適化については業務の範疇にないケースが多いのです。そのため、おのずと他の税金に対しては寛容になりがちです。

2.税金を減らす方策が、追加融資を難しくする?

 よくある例が役員報酬を高めに設定し、会社の利益(所得)を抑え目にしている決算書です。しかし、役員報酬として社長にお金を支払ったとしても、高額な社会保険料、厚生年金、所得税で引かれてしまうため、可処分所得としては思うように社長の手元には残りません(社会保険料、年金は税という名前はなくとも実質税金と同じ性質を持つ)。利益の額によっては、あまり役員報酬を高くせずひとまず会社の利益とし、そこから生命保険や倒産防止共済(経営セーフティー共済)を活用した方が良いときもあります。会社というのは法人税以外にも本当に多くの税金を払っているのです。
 法人税は会社の利益(正しくは〝所得〟と呼びます)に対して掛かる税金ですが、心情的に税金はあまり納めたくないということもあり、半分以上の中小企業が毎年赤字で決算を締めています。もっともこれは意図的な場合と、経営者の意志に反して赤字になっている場合とが混在しているからです。意図的に赤字にしている会社というのは、決算書が黒字だと税金を多く払わなくてはならないため、できるだけ赤字に近づけてしまおうと考えているのです。
 しかし赤字にすると、銀行からお金を借りるときに困ることになります。つまり、税金を過度に意識するあまり、銀行からは歓迎されない決算書を作ってしまっているということです。決算書の内容は中小企業にとっての最大の命綱と言われていますが、税務署対策=金融機関対策ではないということを認識しておかなければなりません。

3.重要なのは決算書上での儲けけではなく現実的な資金繰り

 1999年に金融検査マニュアルが制定され、金融機関による貸出審査が格付に基づく審査方法に変更になりました。これにより金融機関は貸したくても貸せない、債務区分が下がれば引当を積み増ししなければならないなどという状況に追い込まれることになりました。
 格付は、銀行独自の視点で修正評価した決算書を、安全性、収益性、成長性などの視点による定量評価と、社長の計数感覚(企業活動と数字の関係性を把握し経営に活かす力)や社長の健康度合などの定性評価を合わせたものです。この格付が決定することで、融資方針や利率が決められることになります。
 会社にとっての生命線はつまるところキャッシュ。すなわち決算書上で「儲かっているのか、いないのか」ということよりも、現実的な資金繰りのほうが重要です。
 しかし、先ほどの例のように「儲けに対して税金がかかる」ので、「儲けにばかり意識が向いてしまう」のです。中小企業のなかには、資金繰りの管理(キャッシュフローの把握)がしっかりとできていない、たとえば返済余力を掴んでいない社長が多いのも事実です。返済余力とは、税引後利益に減価償却を足した返済財源から、積立金と年間返済額を引いた額です。(表参照)
 返済余力がマイナスとなってしまっている場合、その会社はずっとお金を借り続けなければなりません。返しても返しても、借金が減らない原因はここにあります。
 これまでの話をまとめると次のようなことが言えます。
 税金に目が行くので儲け(利益) が気になる。
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 儲け(利益)が少ないと格付が下 がるので、銀行は融資をしたくて もできない。税務署対策=金融機 関対策ではない。
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結論:決算書=税金→利益が少ないほうが得と考えずに、
 決算書+資金繰りの管理=格付→ 資金繰りへの影響→一定の税金の支払と利益が必要と考えたほうが良さそうだということになるのです。
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