Guest Profile
越智 通勝(おち・みちかつ)
1951年、兵庫県生まれ。大学卒業後、メーカーを経て、大手教育コンサルティング会社に転職。組織開発・教育研修の企画・提案業務に従事。83年株式会社日本ブレーンセンターを設立。10年後、関西ナンバーワンの求人広告の代理店となる。95年、総合転職情報サイト「縁」エンプロイメントネットの運営を開始。2000年に同事業部をエン・ジャパン株式会社として独立させ、代表取締役社長に就任。01年6月、設立からわずか1年6か月で上場を果たす。04年、エン・ジャパンと日本ブレーンセンターを統合。08年、代表取締役会長に就任。
特集「新卒と中途の比率は7対3『合金組織』に仕上げよ」
1.金の卵が新卒、パラジウムが中途、合わせて強い合金が仕上がる
社員が100人を超えて成長期に入ると優秀な新卒人材も入社してくる。当社が新卒採用を始めて8年目に入社した鈴木孝二は現在、当社の社長である。
この時期に大切なことは、拡大志向をもって成長を止めないことだ。会社がどんどん伸びていくと周囲の見る目も変わり、優秀な社員も定着するようになる。
一般に企業は成長期に入ると新卒採用を始め、その良さを知ってしまうと中途採用を止めてしまうケースが多い。新卒のほうが可愛いし、教育しやすい。しかし、新卒だけだと先輩後輩のヒエラルキーができてしまい、時には組織の硬直化を招く。中途を入れて組織に緊張感を与えることが大切だ。
私はこの方法で作り上げる組織を「合金組織」と呼んでいる。プラチナの代替品であるホワイトゴールドは、金70%、パラジウム30%の合金だが、金だけでは弱く、パラジウムと合わせて強い合金が仕上がる。
組織も同じで、金の卵が新卒、パラジウムが中途に該当する。「新卒と中途が切磋琢磨していく組織」。当社もそういう強い組織にしていった。一般的には新卒と中途の比率は7対3をお勧めする。ちなみに、当社本体の現管理職のうち、中途社員は約40%。ホワイトゴールドの比率より少し高めだ。唯一の女性役員である河合恩も中途入社である。
成長期に入ると新卒も中途も優秀な人材が入ってくるが、採用試験だけでは適性を十分に見抜けない。実際に仕事につけてみないと役に立つ人材かどうかはわからない。
当社では①就活時に就職難を経験しているか、②学生時代に勉強や部活でハードな経験をしているか、③中途社員の場合は、最初に入った会社が厳しい風土でハードワークを経験しているか――をチェックし、さらに知能テストで地頭を確認してきた。現在は、新しいテストを開発し、地頭に加え本人の性格、エネルギー、価値観・労働観もチェックしている。
2.経営者自らが魅力を伝える場として、採用説明会を活用すべし
次に、採用説明会について触れる。たとえ社員数100人を超えても、会社説明会は社長自らが行なってほしい。大手企業が行なう人事担当者による説明会よりはるかにインパクトがある。私も25年間自ら行なってきた。今でも年間数十回の説明会をこなしている。大手有名企業の内定を得た優秀な人材に辞退をさせて、当社で獲得することが狙いである。
毎年、われわれ経営者と就活生との年齢差は広がってゆく。しかし、だからといって経営者が遠慮する必要はない。60歳を超えた今でも、若い学生から一緒に働きたいと思ってもらえるか。それが、私自身の経営者としての魅力をはかるバロメーターになっている。これまで説明会の参加者には必ず感想文を書いてもらっているが、あえて賛成できなかった点も記入してもらっている。これが非常に勉強になったことも事実である。
採用説明会のポイントは、きれいごとに終始せず、自分自身の過ちや愚かさにも触れ正直に求職者に伝えることである。話の上手い、下手ではない。読者の皆さんにも是非実践してほしい。