株式会社USEN-NEXT HOLDINGS 宇野 康秀

Guest Profile

宇野 康秀(うの・やすひで)

1963年大阪府生まれ。明治学院大卒。リクルートコスモス(現コスモスイニシア)を経て、人材サービス会社のインテリジェンスを創設。大阪有線放送社の創業社長だった父の急逝に伴い、98年同社を後継。社名を有線ブロードネットワークスに改めブロードバンド事業へ進出。2005年に社名をUSENに変更。10年USEN代表取締役を辞任し、株式会社U-NEXTを立ち上げて社長に就任。USENから譲渡された動画配信サービス「U-NEXT」ほかBtoC事業を手がけ、14年12月には東証マザーズ、15年12月には東証一部へ上場を果たす。17年12月、USENとU-NEXTの経営を再び統合し、USENNEXTHOLDINGS 代表取締役社長CEOとなる。

特集経営統合により 「顧客持ち株会社」を設立 店舗や繁華街の スマート化にチャレンジする

1.【インタビュー特集】聞き手:本誌編集人 松室 哲生

2017年12月、新しいネットビジネスを展開するべく、BtoBをメインとする株式会社USENと、BtoCに長けた株式会社U-NEXTとが経営統合され、株式会社USEN-NEXT HOLDINGSが誕生する。
USEN、U-NEXTで代表取締役を務め、今後は新社の社長として、グループ経営の舵取りに専念する同社代表取締役社長CEO宇野康秀氏に、グループ再編と今後の事業展開について聞いた。



――2017年12月にUSENとU-NEXTの経営統合、USEN-NEXT HOLDINGSの設立を予定されています。その狙いについて、教えていただけますか。

<宇野>
 インターネットは、いまや社会インフラとして定着しました。IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)といった新しいITも次々と広まっています。それに伴い、スマートフォンでネットショッピングをするようになるなど、コンシューマサービスは激変しました。これからはBtoB、BtoBtoCも大きく変わるでしょう。そこで、そうした環境変化に適応できるよう、グループを再編することにしました。BtoBが得意なUSENやアルメックス、BtoC に長けたU-NEXTが一緒になれば、お互いに新しい客層にリーチできるし、新しいネットビジネスを展開できるといったシナジーが生まれるからです。

――なるほど、狙いはよくわかりました。グループ事業の現状は、どのようになっているのでしょう。

<宇野>
 USENは、有線放送事業が主体で現在、全国約62万件の店舗と契約しています。2000年以降、自社の光ファイバー回線網も整備しました。U-NEXTは、ネットを通じたコンシューマ向けのデジタル配信事業が中心です。アルメックスは、ホテル、病院といった大規模施設を対象に情報サービスを提供しています。

――経営統合の狙いはよくても、カルチャーが水と油だと、うまくいかないことも多いですよね。例えば、営業体制ですが、USENはフェース・ツー・フェースの対人営業、U -NEXTはネットマーケティングといった具合に全く違います。

<宇野>
 おっしゃるとおりです。事業を解体・再統合すると、失敗したときのリスクが大きい。既存の事業を守りつつ、新しい事業をアドオンするというイメージです。

――といいますと、具体的には、どのような形になるのでしょう。

<宇野>
 例えば、「顧客持ち株会社の設立」といっているのですが、グループの顧客情報を集約・一元管理することにしました。それをベースに、電力の小口販売などでは、顧客への新しいアプローチを試みています。ほかのグループ会社の商材も販売できるようにもしました。

――経営統合後は、どのような新しい事業をお考えですか。

<宇野>
 ストアのスマート化をご紹介しましょう。店舗に放送用有線だけでなく、ネット回線にも加入してもらい、デバイスのネットワーク化、簡略型POSレジの導入を進めています。例えば、飲食店ではタブレット端末でオーダーを受けるシステムに切り替え、受注データを厨房やレジに飛ばせるようにしました。外国語も表示できるので、外国人客への対応もスムーズです。監視カメラと連動させ、スタッフの管理やセキュリティ、得意客の識別などに活用することも検討しています。予約や在庫管理、人事管理のシステムとリンクさせれば、店舗の業務効率や稼働率のアップにも役立てられます。

――いや、凄いですね。労働生産性が向上すれば、飲食店の人手不足の解消にも貢献できるでしょう。

<宇野>
 実際に、当社の店舗運営サービスを導入した契約店は、アルバイトの人数を平均で約40%減らせているそうです。飲食店だけでなく、小売店、美容室、エステティックサロン、ホテル、病院といった業態でも導入できます。さらに、新宿・歌舞伎町、渋谷・センター街といった繁華街を、エリア丸ごとマネジメントするシステムも構想中なんですよ。

――興味深いですね。どんなシステムなのですか。

<宇野>
 商店街加盟店に当社の情報システムを導入してもらい、ネットワークでつなぎます。そうすれば、エリア内の顧客動向が逐一つかめるので、マーケティングやセキュリティ対策にも活用できるというわけです。当社はもともと繁華街に強いので、そうした事業基盤を生かせるサービスだと考えます。

――実現するのが待ち遠しいですね。とはいえ、ITを活用したそうした店舗運営サービスは、競合他社も狙ってくると思います。御社の優位性はどこにあるとお考えですか。

<宇野>
 有線放送事業で培ってきた店舗向けのノウハウや営業網ですね。営業担当者は、契約店の店長さんと日常的にコミュニケーションを取り、現場のリアルなニーズを吸い上げて、サービスに反映させています。当社には有線工事を担うフィールドエンジニアも揃っていて、契約店の設備状況を知り尽くし、システム運用の手厚いサポートができますし、きめ細かい店舗情報も把握しています。競合他社にはなかなか真似できないでしょうね。

――再編後のグループの姿を、どのように思い描いておられますか。

<宇野>
 グループには、50年以上続けてきた有線放送事業がある一方、新しいネット事業なども混在しています。今回のグループ再編は、多様化した事業内容を見直し、最適配分することも大きな目的でした。これからは守る領域と攻める領域を切り分け、事業ごとにスピードの緩急をつけようと考えています。

――グループの経営体制や組織も、思い切って見直されました。

<宇野>
 事業会社はそれぞれのトップに任せ、権限もすべて委譲するつもりです。私は事業会社のトップを退き、USEN-NEXT HOLDINGSの社長として、グループ経営の舵取りに専念することにしました。「我慢して、人に仕事を振る」。そうしないと、人材も育ちません。

――いや、実におもしろい。グループ再編で、御社のますますの発展が楽しみです。

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