株式会社クロスリンク 矢野 敦子

Guest Profile

矢野 敦子(やの・あつこ)

大学卒業後、凸版印刷に入社。その後、BtoCの業界に行きたい(利用者の声を直接聞きたい)、女性の感性が活きる仕事がしたいという考えに至り、転職活動を開始。心理学ビジネスで人材を募集していたエムアウトに転職。 2009年9月、リラクゼーション・治療院業界を活性化するプロジェクトを立ち上げPJリーダーとして事業を立ち上げ、10年9月クロスリンクを設立、代表取締役社長に就任した。 《企業・法人データ》 2009年9月、エムアウト内のプロジェクトとして創業。 10年9月設立、12年10月、矢野さんが中心となりMBO(マネジメント・バイ・アウト;経営陣による事業買収)を実施。人々のつながり(リンク)を掛け合わせる(クロスする)インフラサービスの構築が社名の由来。 「元気な人が、人を元気にする」が同社のビジョン。 http://crossrink.co.jp/

特集悩みの相談、転職・採用支援で、リラクゼーション業界をリードする

1.ラクゼーション施設で働く人向けのコミュニティや求人サイト、予約システムを提供

 クロスリンクはリラクゼーション施設で働く人向けのコミュニティや求人サイト、予約システムを提供している。新規事業の創出・育成を行なうエムアウトのプロジェクトから生まれた会社の一つで、社長を務めるのが矢野敦子さん。まだエムアウト内の一プロジェクトだった当時から、この事業のリーダーとして関わってきた。

「マッサージ店をよく利用していたのですが、予約は電話でだけなのに、お店の人が施術中だと留守番電話だったりしてなかなか予約がとれない。マッサージは施術着に着替えて、体を触られるのだから、清潔な場所で技術のしっかりした方にお願いしたいのにネット上でお店の様子や施術者の技術を発信しているお店がほとんどなかったんです。ネット予約システムなんか問題外(笑)。それでこの事業を提案しました」

2.予約システム導入施設は前年比120%で成長

 リラクゼーション業界の市場規模を一年間かけて調べ伸びている業界であることがわかった。ところが業界の約500人にヒヤリングしてみると、「売上げが増えないのは自分の技術が悪いのかもしれない」、そんな悩みを抱え、相談できる相手もいない人が多いことを知った。

「それは衝撃でしたね。私たちを元気にしてくれている人達が元気じゃないんだなと。それで利益を優先する事業プランから、『ひとさぽ』という悩みを相談したり、情報収集できるクチコミサイトから立ち上げることにしました」

「ひとさぽ」は瞬く間に業界内で評判を呼び、3カ月で1000人超がサイトに登録、お互いに情報交換したり、悩みを相談しはじめた。求人のニーズも、そのやり取りのなかでに顕在化してきた。

 「この業界の方は向上心が強く、スキルアップを図るために転職が多くなり、求人サイトの利用率も高くなる」

 リラクゼーション業界向けの求人サイトなら他にもあるが、コミュニティサイトと連動したものは他にない。「ひとさぽ」で悩みを相談、情報収集し「キャリさぽ」で転職、次に経営者になって人を雇うために「キャリさぽ」を使う。顧客がクロスリンクのサイトに留まり続ける良い循環が生まれた。

 予約システムを作る際には細かな部分にこだわった。あるメニューを予約したい場合はそのメニューのスキルを持っているスタッフだけを表示する。ベッドで施術するのか、椅子なのかなども明らかにした。導入した施設では顧客が確実に増加し、予約システムを導入した施設では前年比120%程度の伸びを示している。月額利用料4980円(税抜き)という業界最安値もあって、この予約システムは、現在では屋台骨を支える事業に成長した。

3.4期目に黒字化を達成スマホ対応で事業を拡大

 エムアウトでは通常、新規プロジェクトがうまく立ち上がると株式会社化し、イグジットとして事業の売却やMBO、IPOへと導くことにより事業収益を上げていく。当初、このプロジェクトも株式会社化した後に事業売却を模索する。

「しかし、集客と求人がセットになったこのビジネスモデルを理解してくれる企業がなかった。利益に直結する来店予約サイトだけならいいが、コストや手間のかかるコミュニティサイトはいらないと」
矢野さんはこの結果に納得できなかった。「それでどうしても自分でやりきりたいという思いが募って、MBOを申し出た」という。

 そもそもエムアウトでは、プロジェクトを株式会社化するときにプロジェクトリーダーがそのまま社長になることはない。この事業に誰よりも思い入れがある矢野さんだからこその例外的な社長就任だった。そして「私以上にこの業界を大好きな方にまだ巡り合えていない」という熱い思いがMBOへと向かわせた。

「恵まれた環境を離れて独り立ちする覚悟はあるかどうか、社長(エムアウト田口弘代表)からは何度も念押しされました。幸いメンバーが全員ついてきてくれて本当に感謝しています」

 こうして2010年9月、クロスリンクが設立された。

 株式会社化して1期から3期目は会社の土台を固め、4期目には黒字化を達成。5期目となる今期は起承転結の転としてさらなる拡大を目指している。

「スマホ用の『キャリさぽ』が11月下旬には完成します。スマホ用の『ひとさぽ』も近いうちに立ち上げる予定です。業界の活性化になることはどんどんやっていきたいですね」

 以前は社長になることさえ考えもつかなかったという矢野さんだが、いまではリラクゼーション業界全体をけん引するパワーに満ちている。

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