Guest Profile
中田哲也(なかた・てつや)
業務内容●会計、税務、法務、給与関係、ビジネスコンサルティング、起業家のバックオフィス支援、 起業家の支援、不動産事業、相続等 設 立●2002年1月 スタッフ数●11名 所在地●東京都渋谷区東3-12-13ベリータビル2階 電 話●03-6805-1811 URL●http://www.tokyotax.co.jp/
特集”ベンチャーに強い”ブランドで多業種の起業相談から上場支援まで
1.ベンチャー支援の新領域を開拓
東京会計総合事務所パートナーで中田哲也税理士事務所所長の税理士・中田哲也は、ソフトな話しぶりで終始にこやかに取材に応じてくれた。だが、依頼の多い税務調査対応に触れたときには、一転して表情が引き締まった。
「税務署からの納得できない指摘に対しては安易に妥協点を探さずに、主張すべきことは主張して、きちんと筋を通している」
この方針は中田の気質に由来するのかもしれないが、さらに来歴を辿ってみると合点がいく。
1970年生まれの中田は大学院修了後、東京会計総合事務所に入職。地元の商店主や地主さんなどをクライアントに、法人税・所得税・相続税の相談や中小企業のトラブルを解決するワンストップなサービスを手がけていた。2002年、中田哲也税理士事務所を開業して、従来の業務を継続しながら、ベンチャー企業支援という新たな領域を開拓した。
04年に経済産業省が主宰する起業支援ポータルサイト「ドリームゲート」のアドバイザーに就任し、税務・会計、ビジネスプラン、会社設立の相談を担当。同サイトが提供する無料メール相談・面談は600件を超える。中田は同サイトで12年度、13年度のアドバイザーズグランプリ(税務・会計部門)で一位にも選ばれている。同サイトは無料起業相談を提供するサイトで、このような活動を通し、ベンチャー企業のノウハウが蓄積されクライアントも増えていった。
中田は「ベンチャー企業の支援は楽しく、私は同世代のベンチャー企業経営者といっしょに成長してきた」と振り返る。
ベンチャー企業の成長過程では行政機関や業界団体との丁々発止を強いられる局面も少なくなく、それを乗り越えた企業だけが次の成長ステージへと進めるのだ。安易な妥協は出る杭を生まない分、成長力を削いでしまう。
中田はクライアント企業とともに軋轢と闘い、乗り越え、成長に伴走してきた。だからこそ、税務当局にも真正面から向き合うのだろう。
2.政府委員にも就任中小企業政策に精通
中田の事務所のクライアントは約300社で、個人では大家さんをはじめ、フリーランス全般。法人ではIT、人材紹介、芸能事務所、飲食店、美容室、スポーツ施設など多岐にわたる。支援対象の時期も様々で、起業志願者のサラリーマン時代から相談に乗り、独立後はアーリーステージから株式上場後まで支援することもある。
特定の業種や税務分野に特化せず、あらゆる業種の、全ての税務分野に関わってきた。税務・会計業務だけでなく、クライアント企業の成長と軌を一にするようにして事業展開や融資、資金繰りも指導してきたが、その蓄積が事務所の強みになった。
中田も「ベンチャー企業について豊富なケーススタディーを重ねてきたことが事務所の特徴だと思う」と自認する。
ベンチャー企業に強い税理士事務所としてブランディングされたことで、起業して間もないクライアントが増え、起業仲間や知人などからの紹介も加わって事務所を軌道に乗せることができた。「今後もクライアントにご紹介いただける事務所であり続けられるように努力していく」(中田)という。
もうひとつ、中小企業の税制・会計制度に強いことも事務所の特徴だ。
中田は中小企業庁の中小企業税制委員会や租税特別措置効果検証委員会の委員に就任する一方で、中小企業庁監修「平成21年度版・中小企業税制41問41答」「平成21年度版・中小企業の会計31問31答」を皮切りに、2冊子の編集・執筆を22年度版、23年度版と担当した。この経験は何をもたらしたのか。
「政府刊行物を担当する中で、会計や税制の流れを身近に感じることができ、使われていない税制などをクライアントに提案できるようになった。変わりゆく会計制度や税制のみならず、助成金などの情報をキャッチアップして情報提供することに注力していく」(中田)
3.さまざまな経験が積める若手スタッフ活躍の場
こうしたサービス提供機能をクライアント企業がどこまで活用しきれるか。それは、ひとえに税理士事務所との関係の持ち方にかかっていると言ってよい。
中田は「外資系企業などには税理士事務所を単なるアウトソーシング先と見る風潮がある。それでは互いの距離が開いてしまい、作業レベルのアウトプットになりがちだ」と指摘したうえで、こう提言する。
「税理士事務所のノウハウを最大限に引き出すには、使い倒すつもりで何でも相談することだ。相談されれば、その案件に関してだけでなく派生する情報やノウハウも提供できる」
その大前提となるのが信頼関係の確立である。例えば「不透明な会計処理を行なうような企業に対しては契約を断わることもある」(中田)。その点、信頼できる知人の紹介なら、知人が何らかのスクリーニングをかけているので、安心して引き受けられるという。
さらに「クライアントと職員とがアットホームな関係でいられるのが理想だ。安心して長いお付き合いができるような事務所でありたい」と付け加える。
事務所の体制は中田を含めて11名。取材後に応接室から執務スペースに移動したが、ベンチャー企業をメインにしているだけにスタッフも皆若く、税理士事務所に特有の硬質な空気感は漂っていない。どのスタッフも、いかにも闊達に働いている様子だった。
当面の課題は、業務拡大に伴うスタッフ不足の解消である。人材スペックには資格内容や実務経験に加え、社交性も求めている。クライアントに可愛がってもらえる人。クライアントが「この人になら任せられる」と安心感を持てる人。そんな人材を求め、入所後は場数を踏ませてベンチャー企業に強い税理士に育て上げる方針だ。