Guest Profile
中山 貴美子(なかやま・きみこ)
1968年兵庫県出身。大学卒業後、就職内定を断り、カナダへ留学。そこで、自身がいかに軽い気持ちで留学したかを痛感し、猛勉強に励む。帰国後、旅行会社を経て英会話スクールの営業・運営責任者を担当し、仕事の面白さを知る。結婚後、自身の子どもに英語を学ばせたい想いをきっかけに、2000年、英語保育を事業とする会社を設立。今年の9月には海外進出への第一歩、カナダでの開校が決定している。
特集英語保育のプリスクールをベースに教育業界の常識を超える
1.「ないなら作ろう」プリスクールの先駆けとなる
子どもをバイリンガルに育てたいという母親の想いから、起業の道を選択した女性がいる。株式会社キンダーキッズの代表取締役社長、中山貴美子さんだ。同社は英語環境で子供を保育する保育園、いわゆるプリスクールの先駆け的存在である。
「インターナショナルスクールや英会話教室など、自身が納得できるスクールがなかった。それなら自分で作ってしまおう」
キンダーキッズは、そんなきっかけから生まれた。
2000年に第1校目を開校。当時、国内で本格的な英語保育を実施している保育施設はあまり見られなかった。せいぜい英語の時間を設けている程度だった。つまりキンダーキッズは、日本で最初の英語保育のスペシャリティ
ということになる。5~6歳児で英検3級は同校の普通のレベル。真の国際人を意識した、日本語・日本文化の教育も特徴の一つだ。
4月に大阪で開校、15校(大阪・兵庫・奈良・京都・神奈川・東京)となった。現在同校で学ぶ子どもは1800人。卒園後も学び続ける小学生を含めると2300人になる。9月には初の海外進出としてカナダでの開校が決定している。
「グローバルが当たり前の今日、英語を自由自在に話したり書いたりできれば、子どもの可能性が広がります。そのために英語を学ばせたいと考えるなら、3つの条件、①年齢、②時間、③環境を満たすのがベストです。若い頃から長時間、英語環境に身を置けば、自然と身につきます。週1回1~2時間では無理でしょう」
中山さん自身、留学の経験がある。大学卒業後、内定していた就職先を断って、カナダへ渡った。「ただ英語を話せるようになりたい、憧れのような想いでした。でも明確な目標を持って頑張っている他の留学生を見て、自分の浅はかさを痛感した」と当時を恥じるが、その後は人生で最も勉強した時期というほど猛勉強に明け暮れ、英語を身につけることができた。英語学習の3条件はこのときの経験から気づいたものだ。
2.園児の安全にお金は惜しまず13期連続で黒字を達成
ビジネスと教育は、ある部分において相容れないところがある。人を育てるには、これで完了というものがないからだ。追求すればするほどに時間と労力、そしてお金が必要となる。
「教育に携わった以上、保育園を閉めることは絶対にしてはならないと思ってやってきました。閉園すれば、園児が困る、ご両親が困る。人格形成の土台作りが本格的に始まる生後6ヵ月からお預かりしている責任を放棄するわけにはいきません。では、つぶれないようにするには、どうすればいいか。それは身の丈に合った経営をすることです。やりたいことはいくらでもあるが、常に財布と相談します。しかし、園児の安全だけはお金を惜しまず、最良を追求してきました」
課外学習で20人程度の園児を引率する場合、引率者である先生は2名が一般的だが、キンダーキッズは3名が基本ルールになっている。日本語がわからない外国人教師が引率するケースも想定しているからだ。もちろん、日本語の話せる外国人教師がついても3名体制は変わらない。また保育士からの設備面に関する安全面での提案には、すべてに対応をしてきた。
こうした経営方針は、子どもに英語を身につけさせたいと考えている親世代にしっかり受け入れられ、設立以来、13期連続で黒字を続けている。
3.アイアイキッズが定員制売上げの限界を打破
現在、キンダーキッズには関係会社が2社ある。一つは東京を本部とし関東エリアでの事業展開を担う株式会社キンダーインターナショナル。もう一つは国内、いや世界でも初めてとなるビジネスモデルで英語教育事業を推進する株式会社イーキッズプランニングだ。
イーキッズプランニングは「iiKids(アイアイキッズ)」と呼ばれる大規模施設を運営するが、4月に第1号が大阪でオープン。生後6ヵ月の幼児から小学6年生までが対象となり、英語レッスン・アクティビティ・学童クラブの3つのカテゴリーを学ぶ。
アクティビティは、バスケットボールやダンスなどのスポーツ系に加え、サイエンスにクッキングなど、子どもの好奇心を刺激しながら、英語レッスンで習った英語を実際に使って習得していくカリキュラム。施設内の同フロアにあるスポーツジムとも連携している。
学童クラブは、放課後や夜の時間帯に設けられ、その間、子どもたちは自由に過ごせる。宿題をしてもいいし、友達や外国人講師とのおしゃべり、英語版の映画が楽しめるシアタールームの利用も自由だ。
英語を学ぶためのメニューは、キンダーキッズが実施している内容を発展させたスタイルで、レッスンその他の固定した時間割がない。子どもたちは、自分の都合に合わせてレッスンやアクティビティに参加できる。しかし、講師・保育士などの人的要素を考えると、常識的には考えにくい非効率なやり方だ。だが、それをビジネスとして成立させ、サービスの低下を招かない仕組みを作り上げているのだ。
このような方式を開発したことで、保育などの教育現場での「定員」という概念がなくなり、投資効率はキンダーキッズの保育園と比べ、格段にアップする。
「キンダーキッズとアイアイキッズが今後の事業の両輪です。そのほか幼稚園や小学校へのコンサルティングや、海外で採用したネイティブ講師を国内の英会話スクールや教育機関へ派遣する事業も視野に入っています」
また、キンダーキッズを卒園した子供たちのアフターサービスも提供する。すでに中高校生まで継続指導できる体制にあるという。
いま教育業界には、新しい風が吹き始めている。