Guest Profile
加藤 広嗣(かとう・ひろつぐ)
早稲田大学第一文学部卒業。福武書店( 現ベネッセコーポレーション) 入社。経営企画部署で組織改革に従事したほか、営業本部にて全国各支社の変革活動を支援。1998 年に独立、その後、変革人材の育成を支援するフジコーポレーション(Fuji Corporation) 設立。エグゼクティブ・コーチング等経営を担う次世代ビジネスリーダーを支援し、個人および組織行動の変化を創り続け、数多くのメディアにて、『「伴走する育成」で数多くの成功例をもつプロ』として取り上げられる。著書に『「脳タイプ」を知って部下を伸ばす最強リーダー3つの極意』(幻冬舎)がある。
特集本人、チーム、顧客がハッピーになる 〝一石三鳥〞速効性のリーダー育成支援
1.組織のリーダーを 元気にし 継続的な企業成長を 実現する
フジコーポレーションが掲げる謳い文句は、「組織のリーダーを元気にして 継続的な企業成長を実現する」。一言でいえば、ビジネスリーダーの育成が、同社の主たる業務である。といっても、その方法・方式は、いわゆる幹部研修とはまったく異なっている。それは「マンツーマン・ファシリテーション・サポート」という形のリーダー育成方法で、従来の多人数に向けて用意された汎用型のプログラムや、シナリオに沿って進められる研修ではない。マンツーマン方式も大きな特徴ながら、〝ファシリテーション〞の概念と手法を用いているのが画期的なところだ。
ファシリテーションとは、企業、学校、地域のコミュニティ等において、組織や会議などのグループ活動が円滑に行なわれるよう、中立的な立場から支援を行なうことで、1960〜70年代のアメリカで、教育・ビジネスの分野でのグループによる学習や会議を効率的に運営する手法として開発された。21世紀に入り、その概念と手法が世界的に注目されるようになり、日本でも次第に根づき始めている。そのファシリテーションを人材育成にいち早く取り入れ、活用・実践してきたのがフジコーポレーションである。
2.時代に先んじ実践していた ファシリテーション手法
同社の事業の核となっている「マンツーマン・ファシリテーション・サポート・プログラム」とは、具体的にはどのようなリーダー育成方法なのだろうか。
最初に行なうのは、ハーマンモデルを使った思考行動特性調査である。これは、リーダーだけではなく、チームメンバー全員に対して個別に行なわれる。リーダーが自己認識力を上げ、同時にチームメンバー一人ひとりに応じた適切な働きかけ方を修得するために、不可欠な調査である。次に集合研修
(最大でも8人)を行ない、その後、直面している課題についての問いかけをしながら解決プロセスを創っていく。このときに使う手法がファシリテーションである。これによって、今チームはどのような課題に直面しているかを明確にし、その課題を解決するためには、チームメンバー一人ひとりの行動特性をどのように活かし補強すればよいかを理解し、具体的な対処行動がとれるようになる。その後、リーダー自身の思いや考えを振り返るサポートを行ない、それを通して課題に対する知恵の創出と行動力を支援するコーチングを行なっていく。まさしく、実践的な問題解決法であり、伴走型の指導・育成法だ。これは、フジコーポレーション独自のもの(FUJICO式)といっていい。
さらに、必要に応じて自身の思考行動特性を柔軟に切り替える力のカギとなる〝EQ〞(心の知能指数)の鍛え方も指導する『EQこころの知能指数』(講談社・1996年)によれば、「企業の経営会議であろうとひとつの商品開発であろうと、複数の人間が協力しあって仕事をする場合には必ず『グループIQ』というものがある。グループの各メンバーが持っている才能や技術の総合力だ。グループがどれだけうまく目標を達成できるかは、グループIQがどれだけ高いかによって決まる。グループIQを決定する最大の要素は、いわゆる知能テストの平均値ではなく、EQの高さだ」。
こうしたリーダーの現時点での自己認識力と思考行動特性の活用度・EQ発揮度を見極めたうえで、ファシリテーション、コーチングを施すのがFUJICO式なのだ。同社代表取締役・加藤広嗣が、変革人材の育成を目指して、フジコーポレーションを起ち上げた1998年当時は、ファシリテーションという考え方どころか、コーチングという言葉さえ浸透しておらず、それらのサービスを行なう会社は、ほとんどなかった。「企業はまだ、『組織改革が必要だ、筋肉質の組織を目指す!』という掛け声だけで、チーム力を高めるリーダーとは? に答える具体的な方法はなかった」と、加藤は当時を振り返る。人と人が、それぞれ持てる力を引き出し合うことで、はるかによい成果をもたらすことができる。そんなクリエイティブな企業活性化のアイデアと信念が加藤の裡にあった。
3.リピーター企業の増加が リーダー育成効果の証
加藤は、早稲田大学第一文学部を卒業後、福武書店(現・ベネッセコーポレーション)に入社。『進研ゼミ』の編集者となった。そのころは、勉強をスポーツのように楽しいものにすることに心を砕いたという。グループリーダーとなった後、新規事業開発室で新商品の開発等に携わり、経営企画部では組織改革プロジェクトチームの活動を支援、その後、営業本部の一員として全国各支社の変革活動を後押ししてきた。そうした経験を通じて、人を育てること、人が成長する姿を見ることに喜びを感じる自分に気づき、また、人の内なるエネルギーをうまく引き出せれば、チームや組織を元気にできると実感したのが起業の動機だという。「悩んでいたり、自信をなくしていた人が、笑顔になってチャレンジし、一つずつ成果を積み重ねていく姿を共有できることがうれし
い」と語る加藤は、自身もチームも顧客もハッピーになれるのだから、「マンツーマン・ファシリテーション・サポート」は〝一石三鳥のサービス〞だとも言う。しかも、一般の研修とちがって、現実の課題に即した指導・育成がされるため、研修が机上の論議ではなく実践に直結するので速効性が目に見えて分かる。リピーター企業が増えていることも、すぐれて効果のある証だろう。
一方、リピーターとして、付き合いが長くなった各企業のリーダーも多い。ただでさえ、じっくり個人と個人が向き合いながらの長期に及ぶプログラムだ。それらを終えた後、飲みに行くこともあれば、個人的に親しい仲になった人もいるという。実績が定着し、FUJICO式の評価がますます高まるなか、加藤は今年(2017年)、『「脳タイプ」を知って部下を伸ばす最強リーダー3つの極意』という本を出版した。納得するまで自分自身でダメ出しを重ねながら、ようやく書き上げた本だ。特に、部下を伸ばし、チーム力で最大成果を上げたいという、志ある中堅幹部にお薦めの一冊である。