Guest Profile
渡邊 亮介(わたなべ・りょうすけ)
1988年、東京生まれ。18歳で大阪に行き、アパレルのネット通販会社に勤務。パソコンのスキルを身につけ、その後はバーテンダーなど飲食業界を転々とし、20歳で東京に戻る。2013年、結婚を機に不動産業界に転職。すぐさまトップ営業となり、個人事業主として営業代行を請け負う契約に変更。16年11月、株式会社EST GROUPを起業した。
特集収益不動産トップ営業が直接指導 結果につなげるOJT
1.代表が築き上げた 1000人の顧客リスト
不動産仲介会社のEST GROUPは、2016年11月に設立したばかりのベンチャー企業。しかし、すでに約1000人の顧客リストを持ち、成長に勢いがある。
同社は投資用不動産に特化しているのが特徴。扱う物件はワンルームマンションの区分投資ではなく、一棟投資が中心で、大半は一棟物のマンションだ。物件の規模は3000万円ほどのアパートから、6億円ほどのマンションが主だ。投資家である顧客の約80%がサラリーマンで、年収1000万円以上の顧客がほとんど。残り約20%の顧客は企業経営者や開業医など。営業エリアは北海道から沖縄まで全国を網羅する。
同社の強みは、社長の渡邊亮介が個人でつくりあげた約1000人の顧客リストにある。渡邊は「お客様としっかりとした信頼関係を築いているので、お客様が第二、第三の物件を購入されるのはもちろん、ほかのお客様を紹介してくださる。ですから、いまは自分から営業することは基本的にありません」と胸を張る。「お客様の大半であるサラリーマンの方は、毎月10〜20万円の副収入を求められています。それを50〜100万円に増やしていくのが我われの仕事です」
もう一つ、同社には大きな強みがある。顧客に対して適切な金融機関を紹介できることだ。
「3000万円のアパートでも1億円のマンションでも、現金で購入するお客様はいません。そこで不動産投資ローンが必要になるわけですが、当社は独自のノウハウで、お客様に最適な金融機関を探し出し、マッチングする仕組みをつくりました」
2.子どもの誕生以降 一気にトップ営業に
渡邊の経歴は異色だ。東京出身だが、18歳で大阪に行き、アパレルのネット通販会社に勤めた。そこでパソコンのスキルを身につけた。その後はバーテンダーなど飲食業界を転々とし、20歳で東京に戻る。結婚を機に夜中までの勤務となる仕事をやめ、不動産業界に入った。そうして入社した住宅販売会社では、入社当初こそなかなか売れず苦労したが、すぐに頭角を現すようになる。「子どもが産まれたとたんに売れるようになりました。肩の力が抜けて、それまでのようにガツガツ営業しなくなったのがよかったのではないかと思います」と渡邊は振り返る。
同社でトップクラスの営業成績をあげ、最年少で役職に就くも、2年半ほどで転職。「インターネットで集客して販売する不動産業に興味を持ったから」だそう。
その会社でもすぐにトップ営業になり、入社3ヵ月後には独立を社長に申し出る。「それならウチの営業代行をやってほしいと言われました。それで形式上、その会社を退職といいますか、所属はしているんですが、個人事業主として営業を代行することにしました。それ以降、ずっとトップ営業で、入社、所属から4年目の昨年(16年)は72本の不動産契約を行ない、年間取扱高は約120億円になりました」
そして、16年11月に起業。この前職時代に構築したのが、1000人の顧客リストと、顧客と金融機関を結びつけるマッチングシステムだ。
3.社員の採用は 業界未経験者限定
会社設立から半年弱。いまは渡邊の顧客を中心に営業を行なっているが、渡邊は「社員もだいぶ育ってきたのでこれからどんどん伸びます」と自信を見せる。
「当社に3ヵ月いれば、ある程度仕事ができるようになります。結果につながることしか教えないからで
す」
とはいえ、飛び込み営業などでスパルタ式に鍛え上げるわけではない。「飛び込み営業はいっさいありません。新人には、私のお客様に対し物件紹介などをさせ、営業の訓練にしています。新規営業はネットからの反響営業だけです。その場合は私がついて一緒に営業をする。私はおそらく個人としては業界で一番多く売っていると思うので、一番取引等の経験の多い会社=成長させられる環境だと自負しています」
ちなみに同社の社員採用は、業界未経験者に限っている。「弊社では、お客様がきちんと利益が出る物件を仲介することを一番大切にしています。いまはまだ社員全員に対して、私の目が届く範囲の会社規模ですが、今後会社が大きくなって行くなかで、私の基準に合わない物件などをお客様に提案されてしまうと困るので、未経験のまっさらな状態から、私と価値観や判断基準を合わせていきながら成長していってもらいたい。経験者の場合、固定概念にとらわれて、『今までの経験上このレベルの物件でも売れるのに』といった、意見も出てしまう。顧客満足を第一に考えると、むしろ業界未経験のほうがいい」と渡邉は語る。「既存の不動産業界に染まっていると、私の考えと合わないこともあります。私はお客様に間違った提案をしないように徹底して社員教育をしています。お客様がローンを払えなくなるような物件を売るようなことがあってはならない。当たり前ですが、お客様を決して騙してはいけないと社員には教えています」
渡邊のこの言葉どおり、EST GROUPはミッションの一に、「経済的、時間的に豊かな起業家・投資家を多数輩出し続けることで、社会に貢献する」ことを掲げている。「不動産業界はどうしても悪い印象があります。そこも変えていきたいと思っています。この業界はもっと楽しくていい部分がたくさんあります。私は不動産が大好きで、ビジネスとして大きなものを動かしている達成感もあります。そして何よりお客様に経済的に豊かになっていただき、お客様が不動産を購入したことで生まれる経済的余裕から消費活動が活発になり、社会的にも貢献できるのではないかと考えています」
このミッションを遂行すべく、渡邊は事業拡大に向け着々と準備を進めている。
今後、営業拠点も拡充する方針で、まずは大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台などの主要都市に支社を設
け、5年後の2022年までに47の全都道府県に支社をつくり、47人の社長を輩出する計画。グループの売上高150億円を目指している。