アウンコンサルティング株式会社 信太 明

Guest Profile

信太 明(しだ・あきら)

1968年福島県生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中からリクルートにて教育情報誌の企画営業に従事し、92年大学卒業後リクルートに入社。93年日本ネットワーク研究所にて顧客企業の経営戦略策定に携わる。96年ABCマートに入社。98年6月にアウンコンサルティングを設立。日本国内において、検索エンジン最適化(SEO)やリスティング広告(PPC)に関わるコンサルティングをいち早く事業化。

特集現地でのSEOやリスティング広告、多言語マーケティングを展開

1.サウジアラビア語など 64ヵ国語に対応

  タイ・バンコクをはじめ、アジア各地に拠点を構え、SEO(検索エンジン最適化)やPPC(リスティング広告)といったグローバルマーケティング事業を展開しているのが、アウンコンサルティングだ。

 もともと同社はSEOの草分け的存在。SEOという言葉がまだ普及していない1999年に、信太明・代表取締役兼代表執行役員がいち早く事業化した。その後、2001年後半にはSEOがブレーク。現在ではモノやサービスの売買には欠かせないネット・マーケティング手法になっているのは言うまでもないだろう。

 この業界をリードしてきた、信太は自社の強みとして次の2つを挙げる。

「1つはSEOとPPCの両方を行なっていることです。このメリットは、ある1つの戦略を考えたとき、SEOとPPCのどちらがより割安なのかを判断できるため、広告展開のポートフォリオが組みやすい点。つまり、効率の良いマーケティングを提案できるわけです。当社のように両方のノウハウを持つ会社は少ないんですね」

 もう1つは「多言語によるWebなどの制作」だ。ビルマ語やサウジアラビア語など、なんと64ヵ国語に対応している。

 多言語のSEOはインバウンドもアウトバンドも得意分野とするため、同業他社からも案件が流れてくる状況だ。国内市場が縮小傾向にあるなか、グローバル企業の海外展開が加速していることも追い風になっているという。

2.バンコクをはじめアジアに5拠点を設立

 同社は08年4月、タイ・バンコクにBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)拠点を設立。続いて10年には中国・香港、台湾・台北、韓国・ソウル、シンガポールに相次いでセールス拠点を設立した。

 最初にタイ・バンコクに進出したのには2つの意図があったという。

「まず優先したのは人件費を抑えること。手間のかかるリスティング広告などのオペレーション業務を行なうBPO拠点を、人件費の安いバンコクに設けることにしました。当時、バンコクの人件費は東京の8分の1程度で、しかも優秀な大学生を雇用しやすい環境でした。現在は約30人体制になっています」

 2つめに日本企業が進出してくる前に、セールス拠点として早めに準備しておくという狙いもあった。

 「当社のSEOやリスティング広告のお客様は、人材、不動産、ECサイト、旅行、金融の5業界が中心。これらの業界のネット広告需要が大きく伸びる目安となる指標は2つあります。1つは都市圏の一人当たりGDPで1万5000ドルです。もう1つは、決済に使われるクレジットカードの普及。20代、30代、40代の人たちが普通にクレジットカードを持つようになると、インターネットでの流通が加速していきます。バンコクに進出した当時の一人当たりGDPは1万ドルちょっとくらいでしたが、現在はちょうど1万5000ドル程度になっています」

 さらに、香港、台湾、シンガポールへの進出の背景には「円高・ドル安」という当時の状況もあったという。数年後、黒字転換したときに円安になっていれば、黒字幅がかさ上げできるという目論見があり、実際、期待通りの効果を得られたという。

3.現地企業を顧客に黒字化に成功!

 アジアに進出したとき、信太は自ら営業に出かけ、2年間で約800社もの現地企業を回った。
「今週はタイとシンガポール、来週は香港と台湾といったように毎週2ヵ国に行っていました。初めはどこの国でも『SEOって何ですか』という反応でしたが、現地企業のお客様をメインに黒字化できたのは大きな意義があると思います」

 現在、タイでは顧客の7~8割を、その他の拠点では顧客の10割近くを現地企業が占める。これまで蓄積してきた現地のマーケティングに関するノウハウは今後、日系企業に対する営業でも大きなアピールポイントになりそうだ。

 昨年8月からは、海外進出を支援するソーシャルサイト「The Oceanz」もスタートさせた。現在、タイ、香港、台湾、シンガポール、フィリピン、インドネシア、ミャンマーなど8ヵ国で稼働している。今後はアジア各国をはじめ、GDP上位40の国と地域に展開する予定だ。

「日本の企業が海外に進出するまでには、現地のリサーチから法人設立、物件の確保、採用など、いろいろな準備が必要です。こうした進出を検討している企業と進出支援のサービスを展開している企業の架け橋となるのがThe Oceanzです」

 日本企業のアジア進出をサポートし、将来のマーケティングサービスの案件獲得を図るのが狙いだ。

4.ASEANを目指すならバンコクがお勧め

 前述した通り、同社はアジアに5拠点を構えているが、アジア進出を考えるなら、どこの国がいいのだろうか。

「ASEANを視野に入れるなら、バンコクをお勧めすることが多いですね。親日的な国で、日本の製品が好まれる傾向もあります。ただし、資本構成は49%までなので、この問題をクリアするにはパートナーと組んだり、100%資本にするための許可をとる必要があります。また、中華圏を視野に入れるなら、最初は台湾がいいでしょう。台湾も親日的だし、資本100%の会社を設立できます。ただし、17年に日本との関係に影響を及ぼしそうな香港行政長官選挙がありますから、それまでは様子見とすべきではないでしょうか」

 SEOやPPCなどのグローバルマーケティングを武器とするアウンコンサルティング。アジア進出の営業戦略でも大いに頼りになりそうだ。

TO PAGE TOP