派遣継続に必要なのは〝コミュニケーション力〟

 派遣技術者に必要な資質とは何か。技術力は当然だが、同時にコミュニケーション力がことのほか大きなウエイトを占めると言うのは、エジソン社長の田中篤志である。

 

「当社はエンジニアリングサービスを志向している。社員は派遣先のプロパー社員といっしょに仕事をするのだから派遣先で可愛がってもらえる人柄かどうかが重要。仮にミスをしても『こいつなら……』と許してもらえるような人柄が大切で、採用面接でも重視している」

 

 ある派遣先で他の派遣会社との契約が次々に終了するなかで、同社のみが継続契約を結んだことがあった。なぜ唯一、残れたのか。派遣されていた社員に確認したところ、こんな答えが返ってきたという。

 

「すべての飲み会に出席した。そして多くのプロパー社員に顔を覚えてもらい、社内で声をかけてもらえる人間関係を築いた」

 

 実際、契約の更新時に指名される社員や、産休中の女性社員にも「産休明けにはぜひ来てほしい」と、やはり指名のかかる社員が多いという。

 

 しかし派遣先と密接な関係を築くベースは、技術力であることに変わりない。同社の取引先は上場企業150社で、400人近いエンジニアが正社員として在籍し、その60%が自動車業界に派遣されている。自動車業界の開発現場には最先端の技術が集積され、エンジニアの業務は緻密な工程を理詰めで進めていく。

 

 「難易度の高い領域なので技術の蓄積が求められ、派遣会社の新規参入は難しい」(田中)のが現状だ。

 

 

社長に社員がメールで意見を言ってくる

 派遣社員には派遣先のプロパー社員に拮抗するスキルが求められるが、同社には派遣先でプロパー社員を統括したり、指導したりする立場の社員もいる。これを可能にしたのは蓄積してきた技術の厚みに加えて、3DCADなどさまざまな設備がそろう本社内の研修センターを休日に開放し、社員が自由に研鑚を積める環境を整えているからだ。

 

 さらに2011年4月に社長に就任した田中の取り組みも大きく寄与しているようだ。田中は派遣エンジニア出身で「現場を一番良く知るエンジニアが会社経営を担うべき」との方針で社長に登用されたという。

 

 就任後、田中は社内の問題点を洗い出し、108項目について「108の改革」を打ち出した。研修センターの休日開放、ITスペシャリストの育成、社長に直接メールで意見を伝えられる制度、元エンジニアをトップにすえた採用体制の構築などで、その多くが実施済みだ。

 

 社長へのメールは「エンジニアのツボ」と命名され、多くの社員が意見を述べてくるうえに「私を飲みに誘うメールもくる」(田中)

 

 一方で田中は毎月発行する社内報に経営の考え方や現場での経験などを執筆して、意思を伝えている。

 

 108の改革の成果は数字にも表れ、年間10%前後に及んでいた離職率が5%に低下した。当面の目標は2年後に500人体制を築き、IT分野の売上構成比を現在の10%から30%に引き上げること。田中は「派遣業法の改正動向にかかわらず、生産年齢人口の減少を受けて派遣ニーズは高まっていく」と見通している。

 

 

*『CEO社長情報』vol.17掲載

 

|プロフィール

田中篤志(たなか・あつし)

1968年生まれ。自動車の塗装設備メーカーなどを経て、2000年株式会社日研(現エジソン)に入社。派遣エンジニアを経験し、技術部長、人事部長を経て、11年4月社長に就任。。

 

《企業・法人データ》
業  種 ●設計開発技術者派遣、請負業務、技術者教育
設 立 ●1974年7月(新創業:1989年5月)
資本金 ●2000万円
従業員 ●400名
所在地 ●東京都新宿区西新宿3-8-3 新都心丸善ビル7階
電 話 ● 03-3374-2871
URL ● http:/www.edison-ss.jp