Guest Profile
蔵元 二郎(くらもと・じろう)
鹿児島県生まれ。九州大学経済学部経済工学科卒業。大手金融機関にて人事・経営企画に従事した後、グッドウィル・キャリアにて新規事業責任者、社長室長に従事。2002年、ジェイブレイン創業、取締役最高執行責任者就任。同社をベンチャー企業幹部サーチにて国内ナンバーワンに成長させる。09年9月、BNG(*)パートナーズ設立、代表取締役就任。400名以上のベンチャー企業経営者を輩出。毎年3,000名以上の学生に講演をし、次世代アントレプレナーの育成にも力を注ぐ。 *BNG=馬鹿が日本を元気にする 《企業・法人データ》 株式会社BNGパートナーズ 業 種 ● 管理職、経営幹部に特化した人材紹介 設 立 ● 2009年9月 資本金 ● 1000万円 所在地 ● 東京都千代田区五番町4-5 五番町コスモビル3F 電 話 ● 03-3556-3431 URL ● http://www.bngpartners.jp/
特集1人のNo.2より、4人のNo.3。成長法則を熟知した企業が提供する経営幹部紹介の極み
1.トップとNo.2はまったく別のものという認識をトップは持つべき
「No.2(=社長の右腕、ブレイン)を持つうえで最も大事なことは、トップがNo.2に過剰に期待しないことだ」BNGパートナーズ 代表取締役社長、蔵元二郎は言う。
No.2の採用に失敗したり、採用したNo.2が定着しないのは、実は社長が自分の分身を探してしまうことが多いからだという。2人で創業したのなら、どちらかが分身になることは可能かもしれない。しかし、創業した後の成長過程で社長の分身を新しく置くことは不可能に近い。No.2候補者への期待が過剰になり、No.2になり得ない状況を作ってしまう。トップとNo.2はまったく別のものなのだ。
「オーナー経営の場合、社長はよく失敗をするが、No.2はあまり失敗をしない。これは立場の違いからくること。オーナー社長は立場が保証されているので、失敗を怖がる必要はない。一方No.2は経営幹部とはいえ雇われの身なので、失敗するわけにはいかない」
失敗というリスクを覚悟しながら意思決定をするというのは、社長の専任事項であり、No.2が肩代わりはできない。立場上、失敗できないからだ。しかし、No.2を
自分の分身と思い込んでいる社長にとっては「あいつはチャレンジが足りない」ということになる。これでは経営幹部は定着しない。トップとNo.2では根本的に役回りがまったく違うということを理解するのが、最も大事なことなのだ。
2.1人ではなく4人合わせた能力に期待するほうが現実的
「No.2になれるかどうかは、候補者の資質や能力ばかりでなく、社長と価値観を共有できるかという点も重要になる。トップとNo.2は違うということで期待値を下げたとしても、一人の人間にその役割を委ねるのはかなり難しい。会社を安定的に経営しようとするなら、No.3を4人置くべき」
オーナー社長、創業社長は、その下に1人よりも4人が力を合わせた方が高いパフォーマンスが得られるはずだと蔵元氏は言う。
「オーナー社長は、言ってみればサバンナのライオン。もって生まれた能力が覚醒している状態。一方で、社員つまりサラリーマンは動物園の檻のなかの動物のようなものなので、本来の能力が高くても覚醒していない状態にある。これは立場の差であって能力そのものの問題ではない」
だから、社長は1人に高い能力を求めるのではなく、4人合わせた能力を求めるほうが現実的だというのだ。自分がやっている社長業の一部や、マネジメント業務を4人のNo.3にやってもらう。そしてその間、社長は失敗するかもしれない新規事業、無駄になるかもしれない情報の獲得や勉強をするといったことに専念すべきだ。そして、4人のなかから誰か1人が飛び抜けた存在になってくれればいいと。
またNo.2一人に依存すると、その人がいなくなったときのダメージが大きい。だからNo.3を4枚置き、
万一の保険をかけつつ、次のNo.3を育てる準備をしておくという意味もある。
「No.3グループのさらにその下が成長してNo.4、No.5の候補となり、上位4人のうちの誰かがNo.2になったときに、企業はより大きな成長を見せるのではないでしょうか。大成功を収めたベンチャーにはNo.2がいるケースが多く見られますが、そんな因果関係があるのではないかと思っています」
だから、第2創業期ぐらいでNo.2を紹介してほしいと言われたときに100発100中は難しい。実際に幹部採用は打率3割でいいと言われているほどだ。
さらに蔵元は「いきなりNo.2を採用するのは、あまり賛成できない」と言う。
昔からの幹部がいるところにポンとNo.2候補が入ってきたら、必ず「お手並み拝見」になる。これでは新しく入ってくるNo.2候補も自分の能力を発揮しにくい。だから「1つ下のポジションで採用しましょう」とアドバイスを贈る。もし、副社長を探しているのなら取締役として入ってもらい、取締役にしようというのなら執行役員や部長職で入ってもらう。そして、その人が本当に副社長になるかどうかは社長が決めることではない。ほかの社員たちが一目置けば、そのときにタイトル(肩書き)をつければいい。
3.継続的にNo.2候補を紹介できるのは細やかで深いネットワークがあるから
同社ではネット上にいろいろなコミュニティを運営しており、少人数のセミナーとか会食といった草の根ネットワークを構築している。現在18人いるスタッフは、クライアント企業のトップと週に3回も4回も飲みに行く。それで親密なネットワークを作る。大量のデータベースというより、一人ひとりのクライアントとの深く長い関係性を重視するのがBNGパートナーズの特徴だ。
「僕がいま携わっている、社員500人くらいの会社があります。その会社の採用担当の方とは、もう12年くらいの付き合いになります。これは特に長いケースですが、一般的にはだいたい出会ってから2、3年後、タイミングが合ったときにマッチングをします。付き合いのなかで、その人に知り合いを紹介してもらったりもします、優秀な人の知り合いは優秀な人が多い。そこで泥臭く、人間関係を作っていっているのです」
人材データベースには現在約1万4000人が登録。そのうちアクティブなのは5〜10%。1000人いるかどうかだが、カードの量よりも1枚1枚の深さのほうが大事だという。
「人材を探している社長さんについては、ただスペックだけじゃなく、どんな人生を歩んできてどんな価値観を持っているのかといったこともうかがいます」
それがその人について深く知るということなのだ。もちろん候補者に対しても同様だ。組織図は書き換えればいいし、事業戦略も変えればいい。だが人の価値観は変えられない。重要なのはその価値感にフィットさせることができるかだ。
「組織図を先に描いてジョブ・ディスクリプションを決めても、それにピッタリの人を見つけるのは至難の業。大事なのは、まずいい人を採用すること。そして人の価値観や成長に合わせて組織図、オペレーションを書き換えることです」