「私自身の強みは、ニューヨークでアートビジネスをしてきた7年間にあります。ビジネスの場で通用する英語力、文化の異なるさまざまな人種との触れ合いやともにビジネスをしてきた経験、写真家として活動し磨いた感性は、日本の企業の方々が私に期待してくださる点だと思います」と語るのは株式会社SYNCLOBAL代表取締役の坂入美穂さん。東京の大学を卒業後すぐにニューヨークへ渡り、アートの世界で約7年ビジネスの経験を積み、帰国後グローバルに展開する企業に勤務の後に、2013年4月、大阪に会社を立ち上げた。

 

 坂入さんは、茨城県の出身で会社勤めも東京。にもかかわらず、起業の地として知人も少なく縁のない大阪を選んだ。

 

「大阪は未知の新天地のような感覚で、自分の力で何かを成し遂げるにはふさわしい場所といった想いが強くありました。加えて、″退路を断つ”ではありませんが、私自身の″覚悟”でもあったのです」

 

 

創業1年半だが、幅広い顧客を開拓

「通常の企業社会にない感性とネットワークを

求められていると感じます」

 いまはまだ創業1年半。目立った成果を上げているわけではないが、そのユニークな事業展開に注目が集まっている。アメリカ・カナダ・オーストラリアを主なフィールドとする海外展開サポート事業、彼女の感性を生かしたプランニングを核とする企業戦略サポート事業の2つが主要事業だが、案件ごとの中身が非常にバリエーションに富んでいる。

 

 アプリ開発会社からの依頼があるかと思えば、NPO法人もある。オーストラリアの旅行会社、日本有数の家具メーカー、さらにはJAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)といった具合だ。

 

 たとえば、アプリ開発会社から、開発したアプリをアメリカでも展開していくにあたり「ニューヨークでの窓口を紹介してほしい」、「どのようなアプリがアメリカで求められているか知りたい」といった依頼が来ている。

 

 また、岡山県にかやぶき屋根の家を所有し、大阪の小中学生2000名ほどが会員となっているキャンプ教育のNPO法人からは「海外との交流を図りたい」という漠然とした依頼を受けた。坂入さんは海外の商工会議所を通じたルートから、オーストラリアの中高生の修学旅行としてスキーやラフティングなどの体験型の海外旅行を手掛ける旅行会社に接触、 「かやぶき屋根の家でのキャンプは、日本の子供たちとの触れ合いや日本文化に接するいい機会になる」と提案、好感触を得ている。

 

 同社の場合、海外展開サポートといっても、渉外業務だけでなく、マーケティングから、翻訳、コンサルティングも手掛ける。坂入さんがこれまでに築き上げてきたネットワークを駆使しながら、日々それらをこなす。

 

 

JAXAへの提案が商品開発にまで発展

 面白い広がりを見せているのがJAXAとのビジネス。JAXAのニーズは「独立行政法人として広く活動内容を認知してもらいたい」というものだ。たしかに、小惑星探査機「はやぶさ」などロケットの打ち上げに対する認知は高いものの、それ以外のさまざまな活動はあまり知られていない。

 

 坂入さんが目を付けたのは、JAXAが所有している700件ほどの特許。特許技術を開放し民間との連携を推進すれば、活動に対する認知度は高まると考えた。その後、商品開発にまで発展、現在はサンプルづくりやモニター調査なども行なっている。

 

「お客様が私に求めておられるのは、通常の企業社会にはない感性とネットワークだと思います。そのなかで生まれた提案内容が、これまでにない発想や企画として受け入れられ、カタチになっていけば、とても満足です」

 

 社名のSYNCLOBALは、共感・共鳴のSynchronizationとGlobalを融合したもの。そこには坂入さんのビジネスの根幹となる理念や生き方が示されている。地球に住む人々にとって国境はないし、人種や文化の違いがあっても必ず共感し共生することができる。宇宙を舞台にするJAXAとの出会いなどは、まさに″共鳴”した結果ともいえなくはない。

 

「起業してまだ日も浅く経験のない私ですが、周りの方々が私にしかないものに期待されていることを強く感じます。求めておられることに対し、とにかく全力で応えていく姿勢だけは変えません。私が関わりたいのはグローバルをキーワードにしたビジネス。価値観や文化の異なるさまざまな人種の人たちと一緒に働き、新しい提案を行なって国籍を超えた仕事ができる環境を早く整えたいと考えています」

 

 坂入さんは、今後どのように事業の中身が変化していくかわからないという。さまざまな人・企業とシンクロしながら、固定概念から抜け出したボーダレスでグローバルなビジネスを展開する──既成概念や型に囚われやすい男性とは違った女性の感性から生まれる新しいビジネスの在り様に期待感が高まっている。

 

 

*『CEO社長情報』vol.15掲載

 

|プロフィール

坂入 美穂(さかいり・みほ)

茨城県生まれ。ニューヨーク大学でアートマネジメント修士取得。7年間アートビジネスの世界で活動。写真家でもあり、自身の展覧会も多数開催。帰国後、グローバル日本企業および外資系企業で、プロジェクトマネジメントに従事。関西学院大学大学院MBAプログラム在学中の2013年に起業。

 

《企業・法人データ》
2013年4月1日設立。海外展開サポート、企業戦略サポートが現在の主要事業。
http://www.synclobal.com/