株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 石坂 信也

Guest Profile

石坂 信也(いしざか・のぶや)

成蹊大学卒業後、1990年三菱商事入社。液化石油ガス輸入業務、輸送船配船業務、アジア地域貿易及びプロジェクト推進に携わる。 99年ハーバード大学MBA取得。同社金融企画部にて企業買収業務、ベンチャー投資・立上業務に従事。2000年5月株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン設立。代表取締役社長就任。既存ゴルフ業界の従来型産業にネットを組み合わせ、新規ビジネスモデルを立案。04年東証マザーズ上場。

特集ネット予約で人気が復活“楽しむゴルフ”の裾野を広げる

1.バブル時代に幹事で苦労〝ゴルフ嫌い〟の商社マン

 ゴルフ場を予約する場合、一昔前なら電話予約が当たり前だった。ところが、いまではネット予約が急速に普及している。ネット予約でゴルファーから高い支持を集めているサイトが、「ゴルフダイジェスト・オンライン」だ。

 ゴルフ関連のポータルサイトとしては日本最大級。ゴルフ場の予約はもちろん、ゴルフ関連のニュース配信、ゴルフ場ガイド、ゴルフ用品の通販、ゴルフツアーの予約、ゴルファーのバーチャルコミュニティといった、さまざまな機能を会員に提供している。2014年1月現在の会員数は約235万人。同サイトを運営するのが、ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)だ。

 同社の石坂信也社長は米国在住経験のある帰国子女。米国には、低価格で楽しめるゴルフ場が至る所にあり、子供のときからゴルフに親しんでいた。ところが、日本に帰って三菱商事に入社した石坂氏は、すっかり〝ゴルフ嫌い〟になってしまったという。

「商社マンにゴルフは付き物で、新人だった私はコンペの幹事を任される立場でした。あいにく、その頃はバブル真っ盛り。あちこちのゴルフ場に電話をかけまくっても、予約はなかなか取れません。そのうえ、車の手配やら、宴会の切り盛りやらで、ゴルフを楽しむどころではなかったんです」

2.どん底のゴルフ関連業界だからこそチャンスがある

 そんな石坂氏に転機が訪れる。1997~99年、米国のビジネススクールに社内留学したのだ。米国でゴルフの楽しさを思い出すとともに、重大な発見をする。IT先進国の米国では、すでにゴルフ専門サイトも登場していたのだ。
「サイトには、ユーザーの口コミ投稿コーナーまである。こうしたサイトで、ゴルフ場の予約までできれば、コンペの幹事は苦労から解放されると確信しました」

 石坂氏は帰国後、三菱商事でネットビジネスの立ち上げなどに携わったあと退社し、2000年にGDOを創業。ゴルフ場ネット予約事業で、わが国の草分け的存在となった。

「当時、『ゴルフのネット事業に手を出すなんて気が知れない』とよく言われました。バブル崩壊後、ゴルフ場開発ビジネスが頓挫して、ゴルフ関連業界はどん底でしたからね。しかし、そういう状況こそ、逆にチャンスだと考えたんです。日本のゴルフには制約が多かったが、ネットを活用すれば、ハードルが下げられる。そうすれば、ゴルフ人気は復活する」

 ちなみに、GDOは、有名ゴルフ雑誌の出版社である「ゴルフダイジェスト社」のグループと見られているが、経営は完全に独立しているという。

「実は、私の母の実家が、ゴルフダイジェスト社のオーナーなんです。それで、創業のとき、出資してもらったり、暖簾を貸してもらったりして、随分助けられました。ただし、出版事業とは別事業として、ネット事業の経営は私に任せてもらいました」

 創業翌年の01年にはネット通販事業にも進出、サイトのコンテンツの拡充とともに、会員数も順調に伸びていき、07年には100万人を突破。04年には東証マザーズ上場も果たした。13年12月期決算は売上高140億円(前期比9・1%増)となっている。

3.提携ゴルフ場2000ヵ所に年間400万人を送客

 現在、GDOの経営の三本柱となっているのがゴルフ場事業、メディア事業、リテール事業だ。

 ゴルフ場事業は、ゴルフ場予約サービスを中心に、会員情報を活用したゴルフ場へのコンサルティングなども手がけている。提携ゴルフ場は約2000ヵ所、年間送客人数は延べ約400万人に達する。ゴルフは4人1組でコースを回るのが基本だが、定員に空きがあれば、1人でも〝相乗り〟参加でプレイできるというネット予約専用サービスのほか、GDOだけの特典も人気だ。

「ゴルフ場予約のうち、約1割がゴルフ専門サイトを通じた予約です。サービス機能をさらに磨いて、ゴルファーから圧倒的に支持されるサイトにしたいですね」

 メディア事業は、国内外のゴルフトーナメントの戦績をリアルタイムで伝えるなど、ゴルフ専門サイトならではのコンテンツで差別化を図る。売上高は約10億円に過ぎないが、メディア事業は今後の成長が見込める。

「コンテンツの訪問者数は月間700万人を超えているし、サイトでの滞在時間も平均30分。広告媒体としての成長可能性も大きいし、マーケティングにも活用できる。基幹事業として重視しています」

 リテール事業は、クラブやバッグといったゴルフ用品、ゴルフウェアなどを幅広く取り扱い、新品だけでなく、中古品も販売している。

4.スクール事業を立ち上げオムニチャネルも展開

 さらに、経営の第4の柱として注力しているのが、12年からスタートした室内スクール事業。現在、リアルのゴルフ教室「ゴルフテック」(約50坪)を都内3ヵ所で運営。試打で使ったクラブをネット販売するなど、オムニチャネル戦略にも展開する。このように、サービス、メディア、リテールを融合させたビジネスモデルの特徴を生かして、事業間のシナジーを追求していくという。

 現在、ゴルフとランニングを複合した新競技で、米国で広がっている「スピードゴルフ」の紹介にも力を入れている。「ゴルフの新しいスタイルの提案です。ゴルフにはいろいろな楽しみ方があっていいと思う。ゴルファーが草の根で運動を起こせば、日本のゴルフは変わり、裾野も広がるでしょう。GDOをその拠点として役立てたい」と、石坂社長は力説した。

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