信条は「独創的なことをやる」。
ラジコン通販、インポート、ドリフトカー開発……、
新しい夢は、親子孫の三代で楽しむ世界の提案

高校卒業後、18歳でラジコン通販を起業

櫻田 横堀社長は、少年時代から、プラモデルやラジコンがお好きだったんですか。

 

横堀 ええ、軍艦や飛行機のプラモデルをよく作っていました。私は、東京の足立区千住で生まれ育ったんですが、実家近くの荒川河川敷にラジコンの飛行機を操縦しにくる人たちがいたんですね。本物さながらに空を舞うラジコン飛行機を見て、子供心に「自分もやってみたい」と憧れました。それで、親からもらった塾の月謝を流用したりして、ラジコンの飛行機を手に入れ、飛ばして楽しんでいました。それと、小学生のときから、米国製の模型を見ていた影響も大きいですね。

 

櫻田 それはどういうことですか。

 

横堀 父が教育熱心で、「これからは、英語が話せなければいかん」というので、代々木上原の米軍将校の家に英会話を習いに行っていたんです。その家には日本にない玩具があり、英会話の教材にも使っていました。模型の専門誌まであったので夢中で読んでいましたね。

 

櫻田 高校を卒業されてすぐ、18歳で、ラジコンの通信販売を始められたそうですね。

 

横堀 父は私を大学に進学させたかったようですが、私は行きたくなかった。一日でも早く、ラジコンの仕事をしたかったからです。そこで、叔母に協力してもらい、ラジコン通販の起業を許してもらえるよう、両親を説得することにしました。

 

櫻田 ご両親は、相当驚かれたのではないですか。

 

横堀 叔母に、ラジコンの通販が将来有望な事業であることや、自分が高校生のときからラジコン競技大会に出場し、模型の業界に人脈もあることなどを説明しました。ラジコンの通販というのは、おそらく日本初だったと思います。当時、模型専門店は都内にも数えるほどしかなく、地方にいたっては皆無に近い状況だったので、通販は確実にニーズがあるはずだと。そうしたら、叔母も「通販なら片手間にできるだろう」と、家業(和菓子材料メーカー)を手伝うことを条件に間に立ってくれ、両親も渋々承諾してくれました。

 

 

広告掲載の雑誌発売から、5日目に初受注

櫻田 ご実家のお仕事も兼務されていたのですか。それは大変だったのでは?

 

横堀 和菓子の材料作りというのは朝が早くて、4時に起床して夕方4時まで働いていました。そのあとが自分の時間で、ラジコン通販の仕事をしていました。でも、好きな仕事なので、つらくはなく楽しかったですよ。

 

櫻田 ラジコンの通販は、具体的には、どんなビジネスモデルだったのでしょうか。

 

横堀 ちょうどその頃、日本でもラジコン専門誌が季刊誌から月刊誌になったばかりで、そこに通販広告を載せることにしたんです。叔母から「開業資金はどうするの?」と聞かれたんですが、「お客さんからの注文は現金書留で来るので、そのお金で商品を仕入れるから、元手はいらない」って答えました。とはいえ、広告掲載料は必要ですから、叔母から出世払いで30万円前借りしました。1ヵ月の広告代が3万円、10ヵ月分ということです。

 

櫻田 なるほど、多額の資金がなくてもスタートできたわけですね。立ち上がりの状況はどうでした?

 

横堀 それが、予想以上にうまくいったんです。ラジコンは当時、大変高価で、「売れないから止めておけ」とアドバイスされたんですが、雑誌に広告が載って5日くらいして、地方の小学校の先生や旅館の番頭さんから注文が入ったんです。売上げはとんとん拍子に増えていきました。父もそれを見て、会社のなかに「模型部」を作ってくれ、小さな模型専門店を開きました。「横堀模型」の始まりです。

 

 

縁あって三越に出店オリジナル製品も開発

櫻田 商品調達は、どのようにされていたんですか。

 

横堀 主に問屋ルートで仕入れていたのですが、海外からの直接輸入も始めました。そうしたら、「あそこの店には、ほかにはないオリジナルの商品がたくさんある」と評判になりました。忙しくなってくると、英語の得意な次姉が、輸入業務を手伝ってくれるようになりました。社名も横堀模型では外国人にわかりにくかろうと、略称を横文字にして「ヨコモ・YOKOMO」としたわけです。

 

櫻田 若くして、「三越日本橋本店」にも出店されたそうですね。百貨店にラジコン専門店ができたのも、日本初だったとか。

 

横堀 実は、私も後から三越の人に聞いたんですが、本店長だった岡田茂さん(当時は常務。後の社長)の鶴の一声だったんですね。三越のお得意さまに盛田昭夫さん(ソニー創業者)がいたんですが、盛田さんは鉄道模型の愛好家で、「欧米の百貨店の模型売場には当たり前のようにラジコン模型があるのに、三越にはない。それで日本一の百貨店と言えるんですか」と、岡田さんに文句を言ったそうなんです。お誘いの条件もよいはずです。日本橋店に出店したら、予想の2倍以上売れて、1年後には銀座店にも出店しました。三越さんには、7年くらいお世話になりました。

 

櫻田 商品を仕入れるだけでなく、オリジナル製品も作られるようになったのは、どういう理由からだったのですか。

 

横堀 既存のメーカー品のなかに、意中の商品がなかったりすることも多かったんです。それなら、自分たちで作ってみようと。とくに本格的な性能を争う自動車のラジコンは少なかった。現在競技用で世界の主力となっている「ツーリングカー」もヨコモ発です。最近では人気の「ドリフトカー」(タイヤをスリップさせる走行法=ドリフトが可能なラジコン)も、うちが独自開発したものです。。

 

 

欧米では“大人の趣味”中国や東南アジアに期待

櫻田 それでラジコンカーのメーカーとしても発展されたんですね。御社は競技用ラジコンカーに強みがあって、海外での販売にも力を入れているとうかがいましたが。

 

横堀 この10月にアメリカで世界選手権がありましてヨコモ車が優勝、1位と3位を獲得しました。日本では“子供の玩具”といったイメージが強いんですが、欧米では“大人の趣味”として、認知されているんです。たとえば、ポルシェの経営陣やアウディにも“ヨコモファン”がおり、個人的にも親しくしてもらっています。ソニーの盛田さんの話をしましたが、日本でもかつては同じでした。海外経験豊富なセレブの間でラジコンが流行し、うちも三越出店時代には、旧華族や著名な発明家、財界人、お医者さんなどのお得意さまが多かったんです。欧米から逆輸入する形で、ラジコンのステータスを高めたいですね。

 

櫻田 海外事業ではいま、どのような取り組みをされていますか。

 

横堀 欧州では、現地人気シリーズ戦のスポンサーをしたり、プロレーサーと組んでラジコンカーのレースに積極的に参戦したところ、ヨコモのファンが急増し、売上げも2年半で3倍近く伸びました。そこで、これから成長が期待できる中国や東南アジアでも、そうした成功事例を水平展開しようとしています。。

 

 

ラジコンカー体験で高齢者の身体機能も回復?

櫻田 日本国内では、一般向けのラインナップを広げているそうですが、どんな取り組みなのですか。

 

横堀 10年ほど前からは、自動車のチューニングショップ用の製品も開発し、新たなファン層の獲得を図っています。それから、高齢者のリハビリ用の製品の開発も手掛けていますね。

 

櫻田 それは興味深いですね。

 

横堀 茨城県の介護施設の協力で、高齢者5人にラジコンカーの走行体験をしてもらったところ、遊びながら、身体機能を回復できる可能性のあることがわかったんです。男性だけでなく、女性も夢中になって楽しんでいました。社会貢献にもつながるし、ラジコンカーの新しい利用法として提案していきたいですね。

 

櫻田 横堀社長のこれからの目標は何でしょう。 

 

横堀 親と子、孫の三世代が、ラジコンを一緒に楽しめるようにすることでしょうか。1989年に、茨城県つくば市に世界最大級のラジコン用レジャー施設「谷田部アリーナ」を開設したのもその一環です。いまでは、世界中から家族連れで愛好家が訪れています。来年10月には、オフロードカーの世界選手権レースも開催し、ラジコンカーの人気を盛り上げていきます。私は若いときから“へそ曲がり”で、「ほかの人がやらない独創的なことをやる」のを信条にしてきました。これからも、新しい夢に向かってチャレンジしていきたいですね。

 

櫻田 まだまだ夢が膨らんでいきそうですね。先日もノーベル賞受賞者が「好きなことを続けた賜物」だと言っていましたが、好きなことに一生打ち込めることは素晴らしい。横堀社長とお話していると、私も元気が出てきます。今後もますますご活躍されることを期待しております。

 

 

*『CEO社長情報』vol.16掲載

 

|ゲストプロフィール

横堀 智昭(よこぼり・ともあき)

1965年高校卒業と同時に日本初のラジコン模型専門通販店を開業。74年デパート内にRC専門プロショップ開店。77年販売店からメーカーへ転身。本格的競技用車の開発販売に着手。85年社名を(株)ヨコモに変更。自社のオフロードカーが世界戦初優勝。89年日本初の本格的全天候型競技場谷田部アリーナを開設。91年(株)ヨコモ代表取締役に就任。2011年アリーナセンタービル完成。新たなRC市場の創造に着手。

 

 

株式会社ヨコモ

業 種●ラジコンカー模型の製造卸
設 立●1952年4月8日(模型部開設:1965年5月1日)
資本金●1200万円
売上高●13億6500万円( 2014年3月期)
住 所●東京都足立区綾瀬5-23-7
電 話●03-5613-7551
URL●http://www.teamyokomo.com