IBM▶オラクル▶アップルで身に付けた営業スキルを
日本の技術、サービスに注入。

鬼に金棒の経営組織を育成する

「顧客志向対応法」効果でスキルアップ1億円契約を実らせる

櫻田 実は、坂本さんは日本IBMでは、私の1期先輩だった方なんです。ところが、なぜかIBM時代には、まったく面識がなかったんです。

 

坂本 仕事の接点もなかったですよね。まあ、われわれがいた当時は、社員が1万5000人もいる会社で、同期だけで1000人以上いましたから。

 

櫻田 でも、IBMのときの同期や先輩に聞いてみると、「ああ、あの“大きな人”」って、みんな坂本さんのことをご存じでした。

 

坂本 おや、僕って、そんなに目立っていました? 櫻田社長と初めてお会いしたのは3年ほど前、金丸会長(フューチャーアーキテクト会長兼社長・金丸恭文氏)のご紹介でした。

 

櫻田 そうです。「坂本さんなら、社員の競争力を高めてくれる」と聞いて、社員研修をお願いしたんです。効果はてきめんでした。わが社の社員はすごく成長しました。例えば、顧客獲得部隊は、以前は2000万円くらいの新規契約で大喜びしていたのが、いまでは1億円の契約を取ってきても平然としていますからね。

 

坂本 いやいや、御社にいい人材が揃っているからですよ。僕からノウハウを引き出そうと積極的だし、こちらとしても教えがいがあります。

 

 

騙されて入部した男性合唱団で音楽の才能を伸ばす

ストラコム・坂本憲志社長

櫻田 そんなわけで、わが社ではいつもお世話になっているのですが、私自身は坂本さんのことをまだよく知らないんです。そこで、この機会にいろいろうかがおうと思いまして。まずは、生い立ちから教えていただけませんか。

 

坂本 僕は福岡市の生まれで、高校卒業までずっと福岡市で暮らしていました。母親からは、「家から一歩外に出ると、“探検”に行ったまま、なかなか帰ってこない子」だと、よく言われていました。買い物に出かけると、帰り道は興味があるものを見つけては、それをじっと観察していたりして、道草ばかり食っていたそうなんです。

 

櫻田 子供のときから、そんなに大きかったんですか。

 

坂本 そうです。小学生のときも、最後列に並んでいましたね。

 

櫻田 ガキ大将だった?

 

坂本 いえ、そういうタイプではなかったですよ。体が大きいおかげで、いじめられませんでしたけどね。

 

櫻田 東京の大学に進学されたそうですが、どんな学生時代でしたか。

 

坂本 大学に入ってすぐ、女子学生からサークルに誘われて、入ってみたら、なんと男声合唱団だったんです。女子学生はアルバイトだったんですね。騙されました。でも、音楽が好きだったんで、まあ、いいかと。
 そうしたら、はまってしまいまして。音楽の才能は多少はあったみたいで、指揮者の先生に「音大に入り直さないか」と誘われたこともありました。でも、「声楽では食えないよ」と言われ、一旦はあきらめたものの、最近ではオペラにはまってまして、オーケストラと共演などもしています。

 

 

顧客へのプレゼン力営業力が優れていたからIBMが世界で勝てた

FutureOne・櫻田浩社長

櫻田 それで日本IBMに入社されました。IBMを選んだ理由は何だったんですか。

 

坂本 僕は人と話をするのも好きだったんで、営業向きだなと考えていたんです。自分の実力を試すなら、高額な商品がいいと。そうしたら、コンピュータが浮かんだんです。当時、コンピュータといえば、IBMがナンバーワンでしたから。

 

櫻田 IBM時代に体得したことで、これまでの仕事で役に立ったのはどんなことでしたか。

 

坂本 実は、品質や性能だったら、IBMの製品よりも、日本製のほうが優れていた部分も多かったと思います。設計や製造は国内でしたからね。商談でのレスポンスや技術的なメンテナンスだって、日本のメーカーのほうが上です。しかも、IBMの経営方針として、顧客とのバーター取引きや営業裁量での値引きは禁止、といった制約が多かった。それでも、IBMがコンペで日本のメーカーに勝てたのは、方向性の明示、顧客へのプレゼンテーション能力、提案営業力が優れていたからなんです。
 そのノウハウを体得できたのが最大の収穫でした。約10年勤めて、日本オラクル、アップルジャパンへと転職したのですが、IBM時代に培った営業力がその後も武器になりましたね。

 

櫻田 営業のノウハウは、どうやって身に付けられたんですか。

 

坂本 大いに役立ったのはOJTですね。IBMでは、プレゼン能力を徹底的に鍛えられるんです。こんなことがありました。新人のとき、「IBMの新製品説明会に行ってこい」と言われ、職場に戻ってから、その内容を説明したんです。そうしたら、先輩社員たちから鋭い質問を矢のように浴びせられて、答えに窮してしまい、すごく落ち込んだんです。後で聞いたんですが、実は、先輩たちは新製品のことはすでに知っていた。わざわざ僕のトレーニングのために、そうした機会を与えてくれたというわけなんですね。

 

櫻田 私自身も経験がありますが、プレゼンについて、IBMは本当に厳しかったですものね。

 

坂本 IBMの教育法は独特で、自分でわからないことや疑問点を見つけて、その答えを自分から聞きにいかないといけないんですよね。当時、社内制度では決まった指導員がつくんですが、指導員以外の上司や先輩にも聞きに行く。IBMはみんなで人材を育てるという社風でしたね。それに、OJTだけでなく、社内研修も役に立ちました。IBMの研修プログラムはよく練られていて、レベルが高かったですね。

 

櫻田 具体的には、どんな研修プログラムだったんですか。

 

坂本 ロールプレイングは、とても実践的でしたね。顧客によってふさわしい話題を選ぶといったことも学べるんです。服装のアドバイスまである。「顧客の注目を集めたいんだったら、目立つ赤いネクタイを着用しろ」といった具合に、きめ細かかった。

 

 

常識をくつがえす提案で競争の激しかったiPodシェアを半年で2倍に拡大

櫻田 オラクルでの経験で、役に立っていることは?

 

坂本 IBM時代に比べ、営業のフィールドがぐんと広がりましたね。大きなトラブルも経験しましたし、その解決に現場に乗り込むことも多かったですね。とにかくいろいろな経験をさせてもらいました。プレゼンの相手も格段に増え、数百人のオーディエンスに一瞬で内容を理解してもらうにはどうしたらいいか、そんなノウハウが身に付きました。

 

櫻田 オラクルの次になぜアップルを選んだんですか。

 

坂本 IBMでもオラクルでも顧客は法人でした。つまり、BtoBのビジネスだったんですね。「アップルなら、一般顧客を対象としたBtoCのビジネスができる」と勧められて。未体験のフィールドだったんですが、それだけに〝冒険好き〟の僕としては、「おもしろそうだ」と思ったんです。

 

櫻田 アップルでは、どんなビジネスを手がけられたんですか。

 

坂本 最初に担当したのはコンシューマービジネス、特に「iPod」(携帯デジタルオーディオプレーヤー)です。当時、iPodは日本市場でなかなかシェアが取れていなかった。
 入社して1ヵ月後くらいに、米国アップル本社からティム・クック(アップルCEO)が来日して、「日本の売場を見たい」と言われました。売り場を案内すると、「disappointed(失望したよ)」の連発。「iPodを訴求するベストの売場になっていない」と言われたんです。しかし、売場づくりの主導権は小売店にある。生きた心地がしなかったですね。

 

櫻田 で、どうされました?

 

坂本 ティムから、「何か要望はあるか?」と聞かれ、「iPodのモックアップ(模造品)を日本にX万台送ってほしい」と言ったんです。とにかく、「面を取る」、つまり、売場でスペースを確保して、小売店と共同でプロモーションを展開しなければ先には進めません。まずは、それをクリアすることが最優先だと。ティムは了解してくれ、2週間ほどでモックアップを送ってくれました。ただし、「ミッションは、半年後にiPodのシェアを2倍にすることだ」とおみやげがついてきましたが。

 

櫻田 それはきついミッションでしたね。結果はどうなりました?

 

坂本 とても刺激的な期間でしたが、ミッションを無事にコンプリート(遂行)できました。家電量販店の役員の皆さんに小売店の視点、顧客の視点などを分析したうえで、前例のない取り組みを提案したら、乗っていただけたんです。とても非常識な提案だったのではないかと思います。結果、顧客にとっても、販売店にとっても、私達にとっても最高の結果を得ることができました。私達の提案を信じていただき、店頭販売モデルの改革提案に乗っていただいた皆さんには感謝の言葉もありません。

 

 

スキルを客観視できる営業職のための“資格”をつくる

櫻田 アップルから独立して、ストラコムを立ち上げようと考えたのはどうしてですか。

 

坂本 日本のメーカーの技術やサービスのレベルは非常に高い。そこに外資流の営業力が加われば、鬼に金棒です。僕がこれまで培ってきたノウハウを、日本の経済界に活用してもらいたいと考えたんです。

 

櫻田 ストラコムではいま、どんなことに力を入れているのですか。

 

坂本 営業モデル改革や、事業モデル改革のコンサルティング、それを実現するための社員のスキルアップのための研修事業を手がけてきましたが、あるレベルまで行くと、個別のフォローアップも必要だと感じたんです。そこで、昨年5月から「坂本ビジネス塾」を開講しました。参加者4~5人の少人数制セミナーなので、悩んでいたことや深く知りたかったことを、みんなでつっこんでディスカッションできる。セミナーでは、まず前回の課題についてのプレゼンから入ります。実践的なので力がつくと思いますよ。
 当年度ではすでに開始している基本の営業コースに加えて、6月からはマネジメント・リーダーシップコースもスタートしました。初めてリーダーを任されたが、「何をしたらいいかわからない。でも、誰に聞けばいいかわからない」という人が意外に多いんですよね。

 

櫻田 坂本さんの今後の計画を教えてもらえませんか。

 

坂本 将来的には、営業職のための“資格制度”を作りたいですね。技術関係にはさまざまな資格がありますが、営業にはしっかりした資格がない。ロープレで点数化するとか、営業力を客観的にランク評価できれば、とても役に立つと思うのですが。

 

櫻田 とても興味深いお話です。坂本さんなら実現できそうですね。これからもご活躍を期待しています。

 

 

*『CEO社長情報』vol.14掲載

 

|ゲストプロフィール

坂本 憲志(さかもと・けんじ)

福岡県生まれ。1986年日本アイ・ビー・エム入社。大規模システムから中・小規模システムの直接販売営業として活躍。94年日本オラクル入社。支社の立ち上げから、支社長として飛躍的な事業拡大に貢献。05年アップルコンピュータ入社。家電量販店/販売代理店等との連携を強化して、各商品の販売拡大に貢献。国立大学法人富山大学非常勤講師、教育系学会理事経験の後、ストラコム株式会社設立。 

 

 

ストラコム株式会社

業 種●事業改革コンサルティング、営業教育支援サービス
設 立●2009年12月28日
資本金●900万円
住 所●東京都中央区日本橋2-2-3 RISSHUビル UCF4F
電 話●03-6869-2319
URL●www.stracomm.co.jp