「一人一人が社長」を社是に
"プチMBA"研修で経営者を育成る

日本初の広告効果測定システムでネット広告御三家に躍進

白石 鉢嶺さんとは1992年のベンチャーキャピタルの交流会で知り合って、その頃はまだお互いサラリーマンでしたよね?

 

鉢嶺 もともと起業するつもりでしたから、その前にサラリーマンを経験しておこうと。

 

白石 94年にFAXを使ったマーケティング会社を立ち上げたんですよね。

 

鉢嶺 その頃はアメリカ市場ではワントゥワンマーケティングが伸びてきてマスマーケティングを追い抜きました。日本ではマスマーケティングは大手の独壇場でしたが、ワントゥワンマーケティングならいけるかもと。それで飲食店の情報や生ビールのサービス券などをFAXで各企業へ送信する事業を始めたのです。起業当初から上場を目指していましたが、この事業だけでは売上げはせいぜい10億円どまり。そんなときにコンペでインターネットマーケティングの会社に負けて、そろそろインターネットもいけるなと。97、98年からeマーケティング事業に進出しました。

 

白石 まずどんなことを手掛けたんですか。

 

鉢嶺 ヤフーのバナー広告の販売代理店です。そのときに一番の強みになったのは、2000年に日本で初めてネット広告の効果を測定するシステム「ADPLAN」(アドプラン)を販売開始したことですね。ネット広告では「誰が、何をクリックして買ったか」というのがわかる。それを広告主に開示してしまおうと。

 

白石 業界に軋轢を生んだのではないですか。

 

鉢嶺 いままでブラックボックスだった部分を開示するのですから、最初は大手代理店からはお叱りを受けました(笑)。しかしクライアントは反対に大喜びで、次々と広告の発注が増え、売上げが一気に伸びました。
 ネット広告業界は当初、サイバーエージェントやセプテーニが大手だったのですが、オプトが急成長して業界2位になり、04年に上場しました。それ以降、ネット広告御三家はずっとそのままです。

 

 

“1から10に仕上げる”No.2が企業を伸ばす

白石 関連会社が10社以上あります。

 

鉢嶺 ええ。買収もありますし、JV(ジョイントベンチャー)や、社内起業もありますね。いまのネット広告はソーシャルとか動画とか変化が激しいので、それぞれ専門特化した会社を作って市場ニーズにマッチさせています。

 

白石 権限委譲も進んでいるんですか。

 

鉢嶺 そもそも「一人一人が社長」というのが社是なので、それぞれ分社化して自立して経営してほしいという考えです。社名にもオプトの冠はつけていないですし、会社ごとに人事制度なども違います。

 

白石 No.2の役割はどう考えていますか。

 

鉢嶺 非常に重要ですね。こういう会社にしよう、こういうサービスをやろうと推し進めるのが僕の役割。それを実現する要(かなめ)がCOO、No・2で、役割分担があります。僕は「0」から「1」の人間、つまりゼロから何かを産み出す人間、No・2は1から10に仕上げる人間、つまり進捗を管理して業務を遂行していく存在だと以前のCOOが言っていました。上場も優秀なNo・2がいたからこそできたようなものです。伸びている会社はNo・2、No・3がしっかりしていますね。

 

 

会社のマインドが理解できない安定志向の人はいらない!

白石 オプトさんは優秀な人材が多いのですが、リクルーティングのコツは?

 

鉢嶺 会社の理念を理解してくれる人を採用することです。上場するときは社員70人だったのが、3年後に700人と一気に増えました。中途採用が多くなると前職の常識を持ち込んでくる場合も多くなり、また、上場して電通と提携したことで、安定志向の人間も入社するようになって、社風がぐちゃぐちゃになった時期がありました。いまでは、採用時に「安定志向の人はいらないよ」ということをはっきり言っています。

 

白石 御社では研修もユニークと聞きます。

 

鉢嶺 わが社は売りの一つが経営者育成研修です。“プチMBA”みたいなものですね。今年度は111名の応募に対し合格者40名。1年後に卒業できるのが応募の4分の1以下の20名。研修が修了できた20名はグループ会社の経営陣として派遣されます。

 

白石 僕は実務で経営を学んだタイプなんで、座学だけだと偏らないか心配なんですが(笑)。

 

鉢嶺 わが社の歴代COOは二人ともMBAホルダーで、体系化や部下に伝える力が非常に優れてジャッジも早い。確かに座学だけではダメですが、座学と実践を繰り返すと力の付き方が違ってきます。

 

白石 なるほど。ネットビジネスはもう次の時代に入っていると思うんですが、どうでしょうか。

 

鉢嶺 いまはネットであらゆる企業のビジネスモデルが大きく変わる時期だと思います。すでに欧州ではインターネットの広告費がテレビ広告費を上回りました。ネットは直接人と人をつなぐことができるので、単なる仲介業としての付加価値は減少せざるを得ない。これから先も広告代理店がなくなることはないけれど、付加価値は減るだろうから、それが今後のビジネスの至上命題ですね。

 

白石 変革の時代だからこそ、ピンチが最大のチャンスになることもあるわけですよね。まだまだ話が尽きませんが、今日はありがとうございました。

 

 

*『CEO社長情報』vol.18掲載

 

|ゲストプロフィール

鉢嶺 登(はちみね・のぼる)

1967年千葉県生まれ。91年早稲田大学商学部卒業。森ビル株式会社にて3年間の勤務後、94年に退社。FAXなどを主にしたダイレクトマーケティング事業を手がける有限会社デカレッグスを設立し、翌95年、社名を株式会社オプトへと変更。