世界で戦うためには、利益よりも研究開発投資。
社員もどんどん海外へ送り出す。

世界一の経済大国でもインフラが全然整っていない

白石 まず御社のERPパッケージ『COMPANY』の開発の経緯についてうかがいたいんです。あれは本来、国が主導で開発しなければならないものではないかと思っていて。

 

ワークスアプリケーションズ

ワークスアプリケーションズ

牧野正幸氏

牧野 そうかもしれないですね。20数年前、私が大手のコンピューターメーカーで技術系のコンサルタントをしていた頃、日本の大企業は社内システムをゼロからオーダーメイドで作り上げていたのです

 一方、欧米の企業は、当然のようにソフトウエアベンダーが開発したパッケージを導入していた。パッケージソフトであれば自社で開発するコストの5分の1程度で済むうえ、ソフトウエアベンダー同士でしのぎを削って競争しているものだから、コストは下がり、機能もどんどん強化されていきました。

 

白石 そうして、日本とのシステム投資の差もどんどん開いていったわけですね。

 

牧野 そうなんですよ。日本にはソフトウエアベンダーすらありませんでしたから。1980年代当時、世界一の経済大国と言われていましたが、「こんなインフラが整っていない状況では早晩頭打ちになるな。このまま無駄なことを繰り返していていいのか」と思ったら怖くてね。でも、「誰もやらないなら、自分がやればいいじゃないか」と。

 

白石 それで起業したんですか?

 

牧野 結果的にはね。ただソフトウェアの開発には何十億円とかかるでしょう。自分の資金だけではとても無理なので、最初は「プロジェクトとして一緒にやりましょう」って、大手SIerを回ったのですが、「そういう製品があれば欲しい」とは言ってくれても、開発にお金を出してくれるところはなかった。これはもう自分でやるしかないなと。

 

 

開発費用は30億円上場直前までオーナーシェアは1%以下

白石 96年の創業ですよね? うちも同年創業ですが、その頃は、今みたいな資金バブルじゃありませんでしたよね。

 

牧野 そう、どこも出してくれなかった。最終的に、グロービスが出資してくれたので、それでなんとか1年目をしのぎ、2年目からはベンチャーキャピタルから出してもらえるようになった。

 

白石 どうやって自分たちの株式シェアを維持したんですか?

 

牧野 自分たちのシェアはなかったですよ(笑)。結局、開発資金として30億円くらい集めましたから。ある程度の段階で「ここまでできているなら導入してみよう」っていうお客さんもいたので、売上げも上がっていたのですが、利益分も開発費に回していた。だから上場(2001年)直前の、僕ら創業メンバーのシェアはわずか1%以下だった。

 

ベネフィットワン

ベネフィット・ワン白石徳生氏

白石 それで、よく上場させましたね。

 

牧野 さすがに幹事証券からもそれでは上場できないと言われてワラント債を発行、創業メンバーで買い取ってすぐに行使して21%くらいまでアップさせました。それから一時的に開発費を絞って、利益を出して、なんとか上場できたんですよ。日本はうちみたいな開発重視型のベンチャーが育ちづらい土壌ですよね。利益が出ていないと資金の出し手がいないし、上場しても開発費につぎ込むとその分利益が減るから、株価が下がる。結果、いつまで経っても大型投資ができない。

 

白石 上場が足かせになってしまう部分は確かにありますよね。11年にMBOした理由はそこですか?

 

牧野 海外のベンチャーを見ていると、倍々の規模で成長し続けるんだよね。「うちはこんなに時間かけて、まだ売上げ200億円か」と思ったら、もっと成長のために利益を投資していかなきゃと。MBOしたおかげで、株価に悩まされることなく先行投資ができるようになりましたよ。

 

 

グローバル展開は日本企業の海外進出を支え、人材を育成するため

白石 ここ数年で、海外にも積極的に進出していますね。

 

牧野 ええ。4~5年前から、当然ながらグローバル展開をしていくお客様が増えまして、「海外でもワークスさんが使えればいいのに」と、あちこちで言われて、全世界どこでもサポートすることに決めたのです。アジアはシンガポールと上海に拠点を置き、あとはニューヨーク。これから先、ニーズがあれば、アフリカやヨーロッパも視野に入れています。

 

白石 すごいですね。現在、海外の業績はどうなんですか?

 

牧野 日本企業が世界で勝負するためには、われわれがサポートするしかないと思っているので、赤字はやむを得ないと思っています。

 

白石 すごい覚悟ですね。

 

牧野 それができる企業は日本では当社しかないですから。大手も参入してこなかったし、後続もいませんからね。もちろん黒字化していくために、現地法人も対象顧客としていきますよ。そのための採用も現地でしています。(*14年度入社の半数が外国人採用)
 でもそれ以上に、あえて日本人をどんどん海外へ送りこんでいます。

 

白石 あえて?

 

成長の秘策ゴチになります

牧野 早いうちに、海外で働いたほうが成長できるでしょう。当社は特に社内で英語教育をしていませんし、英語が話せなくても赴任させますが、優秀な人は1年くらいでなんとかなる。世界中、どこででも働ける力を若い人につけさせたいのです。

 これから先、海外の企業がどんどん日本企業を買収していく時代になるでしょう。日本にいてもグローバル化の波に飲み込まれてしまう。そういう状況に負けない人材育成はうちの理念でもあるんです。

 

白石 本当に、ビジョンが明確ですよね。

 

牧野 そのために会社を起こしましたから。私ももう51歳。60歳で引退すると考えたら、やるべきことを明確にして、それに集中しないと。もう時間が全然ないのです。

 

白石 僕、4つしか違わないんですけど……。そうか、そうやって考えなきゃダメですね。今日はいい刺激になりました。ありがとうございました!

 

 

*『CEO社長情報』vol.13掲載

 

|ゲストプロフィール

牧野 正幸(まきの・まさゆき)

1963年、兵庫県生まれ。大手建設会社、ITコンサルタントを経て、96年に同社を設立。同社製品であるERPパッケージソフト「COMPANY」は、ERPパッケージ市場で国産パッケージトップ。また、イノベーションの源泉として優秀な人材の採用に注力し、「問題解決能力発掘インターンシップ」を始めとし、次々と新しい採用プログラムを実施。独自の人事戦略でも注目を集め、2010年「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)第1位に選出、7年連続ベスト4にランクインしている。経営者としても「理想の経営者ナンバーワン」に選ばれるなど、幅広い支持を集めている。